「NGリスト」ジャニーズ事務所に必要なのは、3回目の記者会見ではない
今こそ和解のチャンス
BBCのドキュメンタリーは日本社会の常識を変えたが、BBCの取材の端緒は元はと言えば1999年の週刊文春キャンペーン報道にある。あまり誉めそやすのは本意ではないが、週刊文春による一連の報道がなければ、BBCのドキュメンタリーもないわけで、私たちは今頃まったく別の世界線で「ジャニーさん、ありがとう!」と卑劣な性加害者を礼賛し続けていたかもしれない。
ジュリー元社長にお伝えしておくと、週刊誌は新聞やテレビよりもずっと多くの紙幅を割けるので言葉を尽くして語れる上、作り手の気質も少々異なる。
「社会正義の実現」に重きを置く新聞やテレビの報道番組と異なり、週刊誌には良くも悪くも世の中の出来事を「面白がる」精神がある。それは人間の醜い部分やどうしようもない部分をも描き出す文学というものが、出版業界の中心にあるからだろう。ゆえに、週刊誌の単独インタビューの場なら「何々すべきではないのか!」と詰問調で畳み掛けられるような心配もないはずだ。
1999年のキャンペーン報道当時、週刊文春は全然売れなかったという。それだけ、世の中全体の人権意識が低かったということでもある。当時のメディアは愚鈍だったが、私を含め多くの日本人もまた、愚鈍だったのだ。メディア業界のなかでも、あのキャンペーン報道は明らかに経済合理性に適っていない酔狂な行為と見做されていたはず。24年の月日を経て、それがついに日の目を見たのである。
キャンペーン報道後、ジャニーズは週刊文春の発行元である文藝春秋から自社タレントが出演するあらゆる広告を引き上げ、書籍の帯にすらタレントの画像を使わせなかったという。以来、両者は宿敵関係が続いていた。
そろそろ、手打ちをしても良い時期ではなかろうか。
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