最新記事
シリーズ日本再発見

日本人が「税金」に無頓着すぎる理由

2022年10月13日(木)10時25分
高野智宏

たばこ税による税収はふるさと納税よりも多い

「間接税の中でも、小売価格に占める税金の割合が高いのがたばこ税で、その税収は国税と地方税を合わせ年間およそ2兆円に上ります」

そう磯山氏が言うとおり、ウイスキー:23.6%、ビール:45.0%、ガソリン:50.7%に対し、たばこは61.7%と、たばこには比較的高い税負担率(消費税等含む)が課されている。約2兆円のたばこ税収のうち約9900億円(2019年度)が地方たばこ税となるが、この額は実は、約8300億円(2021年度)のふるさと納税をも上回る規模だ。

なお、たばこ税は2018年から段階的に引き上げられ、この10月には、加熱式たばこにおいて5回目となる引き上げを実施。1箱当たり10~20円程度の増税となった。

喫煙者数および販売数量が減少しているにもかかわらず、税収が安定的に2兆円を推移しているのは、5年間にわたり年1回ものハイペースで増税が実施されているからにほかならない(ただし今回、たばこメーカー各社は多くの最新加熱式たばこデバイス用の銘柄で、価格を据え置きにした)。

「たばこ税が2兆円もの規模であることを、非喫煙者はもちろん、喫煙者でも知らない方が大半です。また、たばこ税は一部を除き普通税であり、一般財源となるため詳細な使われ方は明らかにされていません」(磯山氏)

確かに、たばこの税収が2兆円規模であることを知っている人は、ごくわずかだ。リサーチ会社のネットエイジアが今年8月に行った「たばこ税に関する調査」によれば、「たばこ税の税収がどれくらいの金額になるか知っているか」の質問に、非喫煙者の95.6%、喫煙者も89.6%が「知らない」と回答した。

しかし、意外にも「たばこ税は社会に貢献していると思うか」という質問では、喫煙者の75.8%、非喫煙者でも66.8%が「そう思う」と回答するなど、たばこ税が教育や福祉、インフラ整備などに活用されていることが広く認知されていることを実証する結果となった。

非喫煙者にもたばこ税の社会貢献性が認識されているのならば、あとは、喫煙者がいかにマナーを守るか、また自治体がいかにより良い喫煙環境を構築していくかに掛かっているのではないだろうか。

その積み重ねが非喫煙者の喫煙を許容する気持ちを醸成し、喫煙者と非喫煙者が共存できる社会を作っていくと言えるかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中