最新記事
シリーズ日本再発見

脱炭素化までの道に電力危機が...「ZEB」がエネルギー問題解決の一手に?

2022年08月02日(火)14時10分
西田嘉孝

施設内の共用部などには高効率の空調を配して集中管理する一方で、個室には省エネ性能の高い最新エアコン「エオリア」を設置。空調やLED照明は、人感センサーやタイマー、クラウドと連携したEMSを用いて、きめ細かなモニタリングや制御を行い、利用者の快適性と省エネを高いレベルで実現する。

webBZ20220802okinawa-5.jpg

各所に設置されたセンサーが絶えずEMSにデータを送信。省エネと快適性を両立した自動制御を実現する Courtesy of Panasonic

一見しただけでは「普通の」建物とどう違うのか分からないが、この施設は「ZEB Ready」だ。特に省エネ化に貢献しているのが、空調と換気の項目だという。所内の天井には、内気と外気を入れ替えることで冷暖房の効率をアップさせる熱交換器を多数設置。屋上には、高効率の空調室外機が並んでいる。

webBZ20220802okinawa-6.jpg

屋上には太陽光パネルの他、高効率の空調室外機(写真)がズラリと並ぶ。沖縄らしくヤモリ対策も施されている Courtesy of Panasonic

さらに屋上には48枚の太陽光発電パネル。1階部分には蓄電池やディーゼル発電機も配備され、災害などによる停電時でも最低24時間は電力の確保が可能と、まさにレジリエンス性能までを備えた建物だ。

「建物を利用する人の快適性などを損なわず、いかに省エネを実現するかがZEBプランナーの腕の見せどころ」と、小西さん。

「ZEBでの新築の場合、小中規模の施設では一般の建物に比べてイニシャルコストは10%程度アップしますが、光熱費などのランニングコストの削減と補助金でアップ分はほぼ吸収できます」

1つ1つは決して派手ではない、ZEB化の取り組み。だが脱炭素化と電力需給安定化を両立させ得るZEBが日本中に広まっていけば、そのインパクトは大きいだろう。今年から体制を拡充し「本格的なスタートを切った」という日本を代表する大手電機メーカーの本格参入が、ZEBのさらなる普及を加速させるかもしれない。

japan_banner500-season2.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領代行にモフベル第1副大統領、5日間の服

ビジネス

四半世紀の緩和、大企業・製造業は為替影響の回答目立

ワールド

頼清徳氏、台湾新総統に就任 中国に威嚇中止を要求

ビジネス

アングル:海外短期筋が日本株買い転換の観測、個人の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中