脱炭素化までの道に電力危機が...「ZEB」がエネルギー問題解決の一手に?
ここで言う省エネとは、高断熱ガラスなどの建築的手法を除けば、空調、換気、照明、給湯、昇降機(エレベーター)の5設備が対象で、OA機器など設計図に記載されない機器による省エネは対象外だ。これらによる省エネで削減されたエネルギーに、太陽光発電などで創出されたエネルギーを加味して数値化し、第三者認証機関が評価した建物がZEBシリーズとして認証を受けられる。
光熱費などのランニングコスト削減や、快適性や不動産価値の向上、国からの補助金などを含むコストメリットなど、民間のビルオーナーにとってもメリットは大きい。とはいえ、省エネ設備の選択や導入、エネルギー量の複雑な計算など、ZEB認証を受けるためのハードルは決して低くない。
そこで、建築主に対する支援を行うのがZEBプランナーだ。大手設計事務所や大手ゼネコン、電気設備メーカーなど約300社がZEBプランナーとして登録している。ZEBの全国的な普及はまだこれからだが、一般社団法人環境共創イニシアチブによれば、これらZEBプランナーによるプランニング実績は着実に増えてきており、2017年の133件から、2021年には651件まで積み上がった(累計)。
トータルなZEBプランニングによる沖縄の特別養護老人ホーム
ZEBプランナーの中でも、後発ながら独自の強みを発揮するのがパナソニック エレクトリックワークス社だ。パナソニックでは、空調機や照明器具など幅広いラインナップの省エネ設備をはじめ、高性能な太陽光発電や蓄電池などの自社製品を擁している。
「幅広い製品から最適なものを導入し、EMS(エネルギーマネジメントシステム)での設備連携・見える化を図ることで、省エネ性能をより高めることができる」と、パナソニック エレクトリックワークス社の小西豊樹さんは言う。
「省エネの他にも、太陽光や水素などを活用した創エネによるレジリエンス性能の向上、画像センサーや入退室管理システムとの連携など付加価値となる周辺サービスの提案まで、トータルなZEBプランニング支援が行えるのが私たちの強みです」
2019年の市場参入から、同社はZEBプランニング実績を徐々に伸ばしてきた。昨年は9件。今年は6月末ですでに15件を数え、年度末までに40件、受注金額20億円を目指すという。その第一号案件となったのが、2019年に開所した「久辺の里(くべのさと)」だ。沖縄県名護市、沖縄本島のほぼ中央に位置する特別養護老人ホームである。
延床面積は2953.93平方メートル。新築の鉄筋コンクリート造り3階建てで、入所定員は特養29床、短期入所20床、デイサービス20名。近隣住民の避難所として名護市と防災協定も締結している。