脱炭素化までの道に電力危機が...「ZEB」がエネルギー問題解決の一手に?
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<電力需給がひっ迫しているが、脱炭素の歩みを止めるわけにはいかない。そこで今、世界の先進国や日本で推進されているのが、省エネと再生可能エネルギーの活用を組み合わせた「ZEB(ゼブ)」だ>
今年、日常生活を突如として襲った電力危機に驚いた人は多いだろう。東日本大震災後の2012年に運用が開始された「電力需給ひっ迫警報」が、10年の時を経て、3月に初めて東京電力管内で発令された。
6月に入ると、電力供給の余力を示す広域予備率が3%を下回る場合に出される「警報」に加え、広域予備率が5%以下となった場合の「注意報」を資源エネルギー庁が新設。東京電力管内では、6月だけで8回もの「電力需給ひっ迫注意報」が発令された。
コロナ禍からの経済回復による各国の需要増にロシアのウクライナ侵攻が重なり、世界のエネルギー事情は不確実性を増している。日本も決して例外ではない。原発の再稼働が遅れ、火力発電所も休廃止が続くなか、石油や天然ガスの輸入価格が高騰している。
そんな中でも、脱炭素社会への移行は時代の流れだ。脱炭素の実現と、電力需給の安定化。それらを同時に達成するためには、省エネと再生可能エネルギーの活用がますます重要になるだろう。
特にエネルギー消費量の大きい業務部門(事務所ビルや商業施設などの建物)における脱炭素化は、日本のみならず世界の国々が共有する課題だ。そこで今、世界各国で推進され、日本も普及を目指すのがNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)、通称「ZEB(ゼブ)」である。
環境省によると、ZEBとは「快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物」のこと。人が活動する建物内でのエネルギー消費量をゼロにすることはできないが、省エネによって使うエネルギーを減らし、創エネによってエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることはできる。
グローバル市場調査会社のIMARCによると、世界のZEB市場は2015年から2020年にかけて大きく成長し、2021年から2026年にかけては年平均成長率約27%で進展していくと予測されている。また、矢野経済研究所の市場予測でも、日本におけるZEB市場は2030年には7000億円規模にまで成長する見込みだ。
日本での普及が目指されるZEBシリーズとは何か
ZEBの詳細な定義は各国で異なるが、日本においては4種類に分けられ、ZEBシリーズと総称される。
省エネ+創エネでエネルギー消費量が正味ゼロ以下となる「ZEB」、省エネ+創エネで25%以下までの削減を実現した「Nealy ZEB(ニアリーゼブ)」、そして省エネのみで50%以下までの削減を達成した「ZEB Ready(ゼブレディ)」がある。
この3種類に加え、延床面積1万平方メートル以上の施設に限っては、ホテルや病院では30%以上、事務所や学校、工場では40%以上の省エネを達成すると「ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)」として認証。施設の規模や省エネ・創エネの達成度合いなどから4段階で定義されるわけだ。