最新記事
シリーズ日本再発見

渋谷の再開発「続々と超高層ビル誕生」の足元で起こる変化

2019年03月29日(金)16時25分
井上 拓

エリアマネジメントから、街の「ソフト」もアップデート

仮囲いが目立つ駅周辺は、大規模工事の真っ只中だ。渋谷の風景が日に日に刻々と変わっていくのを目の当たりにすることができる。

どうしても再開発はハードやインフラの側面が多く取り上げられがちだが、渋谷のポテンシャルや強みを活かすため、東急グループではエリアマネジメント、エリアブランディングにも重点的に取り組んでいるという。

官民が連携し、渋谷のまちの魅力づくりに取り組んでいる。また地域の学生やオフィスワーカー、クリエイター、アーティスト、地元が連携を強化できるような仕組みづくりも行っている。具体的には、将来像の情報発信や、未来の渋谷の可能性を考えるシンポジウムの開催など。渋谷音楽祭や渋谷盆踊りなどでは、地元の商店会とも協力している。

ほかにも、スタートアップとの事業共創「東急アクセラレートプログラム」を立ち上げ、渋谷でのイノベーション創出を後押しするなど、渋谷のさらなる活性化に努めている。

「エリアマネジメント、エリアブランディングの定義にはさまざまな考え方がありますが、私たちが開発する駅周辺地域を中心とした狭義のエリアだけではなく、渋谷の街全体という広義のエリア、双方の取り組みが重要なのだと考えています」と、東急電鉄の寄本さん。

広義の渋谷エリアマネジメントという観点でいえば、2018年4月に設立された、産官学民連携の一般社団法人「渋谷未来デザイン」という組織をご存じだろうか。同法人の代表理事を務める、東京大学教授の小泉秀樹さんに話を聞いた。

設立から約1年間の活動を終えたばかりの渋谷未来デザインだが、25以上ものプロジェクトに取り組んでいるという。創造文化都市渋谷の実現に向けた計画を策定して渋谷区に提言したり、NTTドコモと組んで5Gインターネット(次世代通信網)などを活用した最先端テクノロジーの社会実証実験として、perfumeのカウントダウンライブを行ったのは記憶に新しいところだ。

ほかにも多岐にわたるその活動を紹介すると......

・社会イノベーションのカンファレンス「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」の運営
・中国のイノベーション都市である深圳市南山区と連携し、南山区のスタートアップ向け国際的ピッチ大会の国内予選開催
・広島県との都市間連携
・渋谷区内でも居住者の多い笹塚・幡ヶ谷・初台のまちづくり
・都市をテーマにしたパブリックスペース利活用のコンペ
・河川公共空間の再構築を目指す社会実験プロジェクト

「渋谷駅再開発に、先進的な企業や人材が入って経済的なインパクトが生まれることは大きな1つの変化です。一方で、その副作用として、海外の都市再生で問われるジェントリフィケーション(編注:都市の中下層地域に富裕層が流入し、地価が上がって、元の住人が住居を失ったりコミュニティが維持できなくなったりすること)のような課題が生じる可能性も緩和していく必要があると考えています」と、小泉代表理事。

緩和手段として、多様性を許容する懐の深さを担保しながら、社会課題を解決していくデザイン、機能や仕組みが必要となってくる。よって渋谷未来デザインのような組織が横断的に機能することで、区民、NPO、企業、大学、行政など、多くの主体が連携したまちづくりの実現に近づいていける。

先端的な技術の社会実験のショールーム化が目的なのではなく、生活者、関わる人たちとともに渋谷の課題解決をデザインし、コアバリューを共有しながら、都市生活の新たな可能性を提示していきたいと小泉代表理事は話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中