渋谷の再開発「続々と超高層ビル誕生」の足元で起こる変化
エリアマネジメントから、街の「ソフト」もアップデート
仮囲いが目立つ駅周辺は、大規模工事の真っ只中だ。渋谷の風景が日に日に刻々と変わっていくのを目の当たりにすることができる。
どうしても再開発はハードやインフラの側面が多く取り上げられがちだが、渋谷のポテンシャルや強みを活かすため、東急グループではエリアマネジメント、エリアブランディングにも重点的に取り組んでいるという。
官民が連携し、渋谷のまちの魅力づくりに取り組んでいる。また地域の学生やオフィスワーカー、クリエイター、アーティスト、地元が連携を強化できるような仕組みづくりも行っている。具体的には、将来像の情報発信や、未来の渋谷の可能性を考えるシンポジウムの開催など。渋谷音楽祭や渋谷盆踊りなどでは、地元の商店会とも協力している。
ほかにも、スタートアップとの事業共創「東急アクセラレートプログラム」を立ち上げ、渋谷でのイノベーション創出を後押しするなど、渋谷のさらなる活性化に努めている。
「エリアマネジメント、エリアブランディングの定義にはさまざまな考え方がありますが、私たちが開発する駅周辺地域を中心とした狭義のエリアだけではなく、渋谷の街全体という広義のエリア、双方の取り組みが重要なのだと考えています」と、東急電鉄の寄本さん。
広義の渋谷エリアマネジメントという観点でいえば、2018年4月に設立された、産官学民連携の一般社団法人「渋谷未来デザイン」という組織をご存じだろうか。同法人の代表理事を務める、東京大学教授の小泉秀樹さんに話を聞いた。
設立から約1年間の活動を終えたばかりの渋谷未来デザインだが、25以上ものプロジェクトに取り組んでいるという。創造文化都市渋谷の実現に向けた計画を策定して渋谷区に提言したり、NTTドコモと組んで5Gインターネット(次世代通信網)などを活用した最先端テクノロジーの社会実証実験として、perfumeのカウントダウンライブを行ったのは記憶に新しいところだ。
ほかにも多岐にわたるその活動を紹介すると......
・社会イノベーションのカンファレンス「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」の運営
・中国のイノベーション都市である深圳市南山区と連携し、南山区のスタートアップ向け国際的ピッチ大会の国内予選開催
・広島県との都市間連携
・渋谷区内でも居住者の多い笹塚・幡ヶ谷・初台のまちづくり
・都市をテーマにしたパブリックスペース利活用のコンペ
・河川公共空間の再構築を目指す社会実験プロジェクト
「渋谷駅再開発に、先進的な企業や人材が入って経済的なインパクトが生まれることは大きな1つの変化です。一方で、その副作用として、海外の都市再生で問われるジェントリフィケーション(編注:都市の中下層地域に富裕層が流入し、地価が上がって、元の住人が住居を失ったりコミュニティが維持できなくなったりすること)のような課題が生じる可能性も緩和していく必要があると考えています」と、小泉代表理事。
緩和手段として、多様性を許容する懐の深さを担保しながら、社会課題を解決していくデザイン、機能や仕組みが必要となってくる。よって渋谷未来デザインのような組織が横断的に機能することで、区民、NPO、企業、大学、行政など、多くの主体が連携したまちづくりの実現に近づいていける。
先端的な技術の社会実験のショールーム化が目的なのではなく、生活者、関わる人たちとともに渋谷の課題解決をデザインし、コアバリューを共有しながら、都市生活の新たな可能性を提示していきたいと小泉代表理事は話す。