渋谷の再開発「続々と超高層ビル誕生」の足元で起こる変化
東急グループによる駅周辺開発は8プロジェクト
では、現在進行中の再開発で渋谷はどう変わるのだろうか。東急電鉄で渋谷のまちづくりを推進するチームに話を聞いた。
「"エンタテイメントシティSHIBUYA"を目指し、長年積み重なった課題を克服すること、そして渋谷が持っているポテンシャルをさらに強化すること。こうしたテーマでまちづくりを推進しています」と、東急電鉄の浜本理恵さん。
具体的には、東急グループは渋谷駅周辺で8つの再開発プロジェクトを推進中だという。2012年に「渋谷ヒカリエ」、2017年に「渋谷キャスト」、2018年には「渋谷ストリーム」「渋谷ブリッジ」が既に開業している。
また、先に述べた、ハイグレードオフィスや産業交流施設「SHIBUYA QWS」、日本最大級の展望施設「SHIBUYA SKY」を有する「渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)」が今秋開業のほか、今後は以下の施設が誕生予定だ(なお、渋谷スクランブルスクエアは、JR東日本と東京メトロとの共同事業)。
・南平台の「渋谷ソラスタ」(今年3月29日に竣工)
・道玄坂一丁目駅前地区の「渋谷フクラス」(今秋竣工予定)
・渋谷駅桜丘口地区(2023年度竣工予定)
・渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)(2027年度開業予定)
渋谷は「谷」という文字が示す通り、すり鉢状の谷地形である。道玄坂や宮益坂に代表される坂も多く、ゆえに災害時の脆弱さを指摘され続けてきた。また駅発展の変遷の中で各種インフラが錯綜してしまっており、複雑な動線による不便さなど、克服すべき課題も積み重なっていた。
再開発の大きな契機となったのは、都市再生特別措置法の施行により、渋谷駅周辺地域が2005年に「都市再生緊急整備地域」、2012年に「特定都市再生緊急整備地域」にそれぞれ指定されたこと。いわば、緊急に市街地整備を行い、都市再生を実施せよという国からのお達しだった。
「エンターテイン(entertain)は、おもてなしをする、という意味があります。暮らす、遊ぶ、働く方々をきちんとおもてなししていくためには、当然、分かりやすい動線設計もバリアフリーも必要ですし、防災の強化を含めた安全性の高い機能も持たなくてはなりません」と、東急電鉄の寄本健さん。
渋谷は、2008年に東京メトロ副都心線が開通し、2013年には東急東横線と副都心線の相互直通運転が実現。今回の都市再生プロジェクトにも、都市インフラ整備の一例として、「アーバン・コア」という人の移動を縦方向にスムーズに行える基盤を構築することで、交通結節性の機能を改善し、人の移動動線を改良して利便性や回遊性を向上させる策が組み込まれている。
エンターテインには、もちろん文化的な意味も含まれる。東急電鉄の寄本さんは言う。「渋谷に何回足を運んでも楽しい、と思ってもらいたい。そのためには、東急文化会館のDNAを引き継いだ渋谷ヒカリエの東急シアターオーブだったり、昨年開業した渋谷ストリームホールであったり、施設の中にも文化的機能を持たせたり、街に残したりすることも重要だと考えています」
オフィス不足の課題についても、再開発によってハイグレードなオフィスを新たに整備。今年度中には、2010年に渋谷から六本木に移転したグーグル合同会社の本社機能が渋谷に戻ってくる。シェアオフィス空間も増設し、スタートアップを含めたIT企業の集積化も加速している。