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シリーズ日本再発見

「デジタルファースト」で岐路に立つ日本の「はんこ文化」

2019年02月01日(金)17時10分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)

「象牙の印鑑」という少なくとも一つの印鑑文化の終わりと、デジタル化の波は、確実に近づいている。一方で、このタイミングで、「クールジャパン」の一つとして印鑑が見直されているという事実もある。

テレビ番組でハンコ愛が紹介されてブレイクした「ハンコ王子」こと、在日フランス人のロマ・トニオロさんというタレントも登場した。ロマさんは、「兎弐桜路」という漢字の当て字の印鑑を愛用。日本での生活を始めるにあたって、アパートの契約などの様々な局面で恍惚の表情でハンコを押す様子がお茶の間に流れた。

ポンとスタンプするだけで家を借りれたり、銀行口座を作れたりと、「なんでもできるはんこが魔法の道具に見えた」と、ロマさんはテレビで語っていた。そこに彫り込まれる漢字には、一文字一文字に複数の意味が込められているという、アルファベットにはない魅力がある。そんなところが、外国人の目を引くのだろう。

「はんこは日本の文化を象徴するとても大切なもの。だから、はんこを使うことは僕が(大好きな)日本人に近づく大切な一歩なんだ」と、親日家のロマさんは語る。外国人向け日本生活情報サイト「TOKYO CHEAPO」のライター、グレッグ・レーンさんも、多くの在日外国人は、日本社会の一員であることを実感するために印鑑を作ると指摘する。

最近は、日本みやげに自分の印鑑を作ったり、既成の印鑑を買う外国人旅行者も増えている。「日本で買うべき最もクールなもの」として印鑑を紹介している旅行情報サイトもあるほどだ(JW Web Magazine)。観光地の土産物店には、「安(Ann)」「富夢(Tom)」などの外国人向けの印鑑も並ぶようになった。

このような文化としての「はんこ」と、実用品としての印鑑とは、分けて考えるべきかもしれない。いずれにしても、私たち日本人自身が、真剣に「はんこの未来」を考えなければいけない時期に来ているのは、間違いない。

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