日本のプロレスが海外で人気爆発! 新日本プロレス・メイ社長に逆輸出の秘訣を聞いた
――日本から世界へ。改めてお聞きします、新日本プロレスはなぜ海外市場へ挑戦するのでしょうか。
日本は人口が減り、モノが売れなくなり、日本経済そのものがこれまでと違うフェーズになって、グローバル化しなくてはならない......といった、海外に行かざるを得ない話は当たり前なので割愛すると、もし違う側面で海外に行く理由を言えば、新しいファン層はもちろん、新しい試合の形など多くのことを逆輸出できるメリットもあるんです。他のやり方を学ぶことで、日本のプロレスがもっと良くなる可能性もある。
また世界にプレゼンスがあるということは、新日本プロレスに世界中からレスラーが集まってきてくれることにもつながる。だから世界の舞台があったほうがいいですし、純粋にレスラーとしては、自分たちの日本のプロレスの素晴らしさを世界中に広めたいという強い想いがあります。
アメリカという市場だけで言っても単純に日本の10倍はある。テレビチャンネルの数も半端ないように、ご存じの通り広い国なので会場もたくさんある。最近では日本のトップレスラーだった選手がアメリカに行ってもスターですよね。日本人メジャーリーガーではありませんが、日本のプロレスラーも決して負けていないのです。
――「日本のコンテンツは自信を持て」と以前発言されていました。その真意を教えてください。
よく日本の緑茶を例にとって話すのですが、海外で緑茶を飲むと、魚臭いと言う外国人も多いんです。なので日本の企業は、臭みを感じなくするように、緑茶にミルクを入れたり、砂糖を入れたりする。
これは短期的に見たら、外国人が緑茶を好きになってくれるかもしれない。でも本物じゃない。外国人が日本に来て緑茶を飲んだら、あれ? 砂糖なんて入れないじゃないか、まったく違う味じゃないかとなるんです。
海外の市場に行くなら自信を持って、これが本物の緑茶なんです、という姿勢が大事だと思います。これは、日本のプロレスも一緒です。試合展開や流れは、外国に合わせなくていい、これが私たちのやり方、スタイルである、と。自信を持っていないといけないと思います。
ですから海外の試合でも、選手の名前も、選手紹介も、日本語そのまま行っています。一応、英語でも言っていますが、日本語はなくしていない。なぜならそれが本物だから。海外の人にとっては英語のアナウンスを聞きたいのではなくて、日本語そのままのものに興奮したり熱狂したりするのです。
一方で法務的な話はきちんと守らないとダメです。海外では保険の考え方もセキュリティの考え方も違い、とても厳しいです。こうした法令遵守や社会規範を意識することは大切ですが、それに影響しない試合の内容などは変えるべきではない。グローバル進出するなかで、それがブランド、コンテンツということなんだと思います。
――最後に。これからの新日本プロレスへの想いを聞かせてください。
2014年12月に動画配信サービス「新日本プロレスワールド」というものを作りました。国内外にいるファンの方々で、会場にはなかなか来られない人もいる。でもインターネットさえつながっていれば、試合を、自宅にいながら楽しめる。
動画配信にはこれからも投資していく予定です。さらに映像班だけでなく、英語部隊も立ち上げて強化しています。やはりリアルとバーチャルの双方が必要。試合に来られない世界中のファンのためにも、同じような体験ができるコミュニケーションをどんどんやらないとダメだと考えています。
私は8歳の頃からプロレスが大好きです。数年前、ある試合を見て涙が出るほど感動したこともあります。選手たちが感情や心を全て解放して戦う試合でした。プロレスってここまで行けるんだ。まさに芸術でしたね。日本のプロレスがグローバルに挑戦し、ブランドであり続けるためには、スポーツでありながらこうした芸術性、アートであることもとても重要なんだと思います。
みんなが使っていたものが一時期なくなって、いや、でもこれって本当に素晴らしいものだよねって、再発見されることありますよね。まさに復活を遂げたプロレスというコンテンツの魅力をさらにお届けしていきたいですね。
●2019年1月4日
新日本プロレス東京ドーム大会『WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム』開催
メインのIWGPヘビー級選手権試合はケニー・オメガvs棚橋弘至。他、IWGPインターコンチネンタル選手権試合に、クリス・ジェリコvs内藤哲也、スペシャルシングルマッチにオカダ・カズチカvsジェイ・ホワイトなど豪華対戦カード多数。
『WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム』特設サイト
https://www.wrestlekingdom.jp/