洋食は「和食」なのか? NYに洋食屋をオープンした日本人の挑戦
――「スバゲッティ・ナポリタン」がメニューにないのはなぜなのか。
ナポリタンが嫌いとかいうことではないのだが、アメリカでこのメニューだけは受け入れられる自信がなかった。特にニューヨークには美味しいイタリア料理屋がたくさんあって、美味しいパスタを食べ慣れている。
一方で、日本の喫茶店などで出しているナポリタンに使う麺はいわゆるアルデンテではなく、おそらく茹で置きしたものだ。オペレーション的にも麺を茹でて小分けにしたものを寝かせておいて、注文が入ったらケチャップと具を入れて炒める、というやり方が多いようだった。
それを、こっちでパスタを食べ慣れている人たちに出すというのを考えたときに、受け入れられるかどうかは疑問だった。
もちろん、やり方はもしかしたらあるのかもしれない。ツイストして、アレンジして、ちょっと高級な感じにするとか。でも今回はストレートな洋食をやりたかったので、他のメニューもあえて目新しいことはせずクオリティと食材にこだわった。
そのコンセプトでナポリタンを作ったときに、他のものと同じように喜んでもらえる自信がちょっとなかった。悪いとは言わないし、日本人だったら受け入れられるのだが。
――もともと和食より洋食のほうが好きなのか。
そうかもしれない。子供の頃も、例えば朝ご飯で、家族はお米を食べているのに僕だけパンだったりとか。今はお米が大好きだが、小さい頃はチーズとかカレーとかハンバーグとか、そういうのが好きだった。
僕は宮崎出身なのだが、宮崎県にある「味のおぐらチェーン」というチキン南蛮の発祥とされる洋食屋さんに行っていた記憶もある。僕が「おふくろの味ってなんだ」と聞かれたら、「ハンバーグ」とか「カレー」と答えると思う。
洋食は、ヨーロッパから日本に伝わったものが、日本でアレンジされて家庭料理になった。厳密には「和食」ではないかもしれないが、西洋料理が日本に入ってきて日本人の手によって日本人向けに作られて、歴史もあって、日本に浸透して「日本のもの」という認識になった。
アメリカ人に「これは和食だ」と言っても、なかなかそうは認識されないだろう。お店のシーフードグラタンがレビューだと「マック&チーズ(マカロニ&チーズ)は......」と書かれているように、アメリカ人も「どこかで食べたことがある味」に転換して受け入れていくと思うので。
ただ、オムライスなんかは「ジャパニーズ・オムライス」と書かれていたりする。日本式に転換された、洋食だと。
お店のコンセプトとしては、「洋食というのは日本のコンフォート・フード(家庭料理)で、昔から日本人に親しまれてきた」と謳っている。昔ヨーロッパから伝わった料理が日本でこういう形になった、ということを伝えていきたい。
【参考記事】世界も、今の人たちも、和食の素晴らしさをまだ知らない
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