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炊飯器に保温機能は不要――異色の日本メーカーが辿り着いた結論

2017年02月10日(金)18時40分
安藤智彦

Photo: BALMUDA

<2年前に高級トースターで家電市場に旋風を巻き起こしたバルミューダが、機能を「研ぎ澄ました」炊飯器を発売。シャープや東芝など大手メーカーが勢いを失うなかで、業績がうなぎのぼりなのはなぜか>

【シリーズ】ニッポンの新しいモノづくり

日本の家電メーカーが勢いを失って久しい。コストパフォーマンスにすぐれ、不具合や故障が少なく信頼性も高い――そんな評価が日本ブランドの象徴としてもてはやされた時代は、なんだか遠い昔のようだ。シャープや東芝の家電事業が海外企業に買収されるなど、かつては想像もできなっただろう。

アメリカでもヨーロッパでも、今や家電売場で日本メーカーの商品を目にすることは少ない。海外のショッピングサイトでフィーチャーされることもほとんどなくなった。

理由はいくらでも考えられるだろうが、ひとつ確実なのは消費者の需要を掘り起こす、商品開発力を失っていることだ。たとえば「ソニーの開発力があればiPhoneは生み出せた」と振り返ったところで、負け犬の遠吠えに過ぎない。

いわゆる大企業が退場を迫られるほど、家電業界での退潮が鮮明な日本勢のなかにあって、業績がうなぎのぼりという異色の存在がある。東京・武蔵野市に本社を構えるバルミューダだ。

バルミューダの知名度を一気に高めたのが、高級トースター「BALMUDA The Toaster」だ。数千円も出せば買える製品が中心のトースターの市場に、その10倍ほどの価格の高級モデルで殴り込みをかけたのは2015年のこと。パンを焼くことしかできない単機能のトースターにそんな大金を出すはずがない――普通はそう考えるところだろう。

だが、批判的な周囲の声はどこ吹く風。バルミューダの寺尾玄社長はかねてからの主張を淡々と繰り返すだけだった。「ウチは市場調査をしない。自分たちがほしいと思える商品を作る」

美味しいトーストを毎朝楽しみたい、そんな寺尾の思いを実現するために、独自の温度制御とスチーム技術を組み合わせたのがThe Toasterだった。

japan170210-sub3.jpg

Photo: BALMUDA

発売に先駆けた製品発表会で、筆者も実際にThe Toasterで焼かれたパンを試食したことを覚えている。確かに美味い。一部のパン好きには響くだろう。だが、いかんせん高い。日常使いというよりは「趣味家電」の域を出ないのではないか、それがファーストインプレッションだった。

もっとも、そんな思い込みはあっさりと覆されることになる。蓋を開けてみれば、The Toasterは異例のヒット商品となった。発売前から予約が殺到し、入荷まで数カ月待ちの状況が続いた。The Toasterの大ヒットを受け、他のメーカーからも類似商品が相次いで登場する結果となった。

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