コラム

グローバルサウスがBRICS加入を目指す3つの理由──先進国で忘れられた70年の暗闘

2023年08月22日(火)14時20分

この状況で先進国か中ロのいずれかと固定的な関係を築くことは、ほとんどの途上国にとって不利益が大きい。むしろ、どちらにでも重心を移せることが、大国に対する発言力につながる。

特定の大企業とのみ仕事をしていて他に行けないことが明らかな中小企業は買い叩かれても文句を言う先がないが、それと同じことだ。

この流動性の観点からすれば、先進国と中ロの対立がこれまでになく先鋭化し、さらに中国をはじめBRICSが世界経済に占める割合がこれまでになく大きくなっているなか、リスクヘッジとしてBRICS加入に関心を持つ国が増えることは、いわば当然の結果だろう。

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先述のように、グローバルサウスの多くはグローバル化に対して多かれ少なかれ不満を抱き続けてきたが、その一方ではグローバル化の産物である流動性を最大限に利用している。その意味でも、BRICS加入を目指す途上国・新興国が増えることは、歴史的な必然といえる。

それを踏まえず、「民主主義vs権威主義」「デカップリング(さすがに非現実的すぎるのでG7サミットでも否定されたが)」といったスローガンだけ唱えても、この流れは止まらない。むしろ先進国のそうした二者択一の論調は、まずますグローバルサウスを警戒させ、リスクヘッジに向かわせる原動力にさえなりかねないのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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