コラム

「タリバンに学べ」──アフガン情勢を注視する各地のイスラム過激派

2021年09月03日(金)17時05分

つまり、第三者の目にどう写ろうと、参加者にとってISは不正と欺瞞に満ちた世の中を正す、一種の「世直し」だったといえる(この自己認識と他者による評価のギャップは白人至上主義者などあらゆる過激派に共通する)。

しかし、ISは国際的に全く承認されず、結果的に一時ほどの勢力はなくなった。タリバンの復権はIS衰退の空白を埋めるものだ。

タリバンはISほど海外のフォロワーを集めることに熱心ではない。とはいえ、コロナ感染の拡大も手伝って、政府への不満がイスラム世界でうず巻く状況は、タリバンの「成功」イメージを広げやすくしている。

正統な政権として認められる意味

今後の一つのポイントは、タリバンが正統な政権として認められるかだ。

各国には温度差があるが、遅かれ早かれ各国は、タリバンをアフガンの正統な政権として承認せざるを得ないだろう。そうでなければアフガンの混乱はさらに深まることになるし、「外部の都合」でアフガンの政権が左右されれば、それはそれでイスラム過激派の反発を強める。

ただし、正統な政権と国際的に承認された場合、タリバンはISとは異なる形で、イスラム国家としてのモデルを提示することにもなる。それはタリバンが望むと望まざるとにかかわらず、過激派にとって一つの「道しるべ」になることを意味する。

今後アフガンでどんな政権ができるのかは、イスラム過激派の動向をも左右するといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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