「死ぬ用意はできている」──なぜエチオピア少数民族は絶望的な戦いに向かうか
こうして立場が入れ替わったTPLFは政権から離脱し、エチオピア政府と対立を深めたのである。主流派の座を追われたTPLFにとって、その座を奪いとったアビー政権に屈することは、「反体制派」の汚名を受け入れることに等しいのであり、最後通告を無視したことは、この点から理解される。
この構図は、官軍であったはずの会津藩が時世の変化によって賊軍の汚名を着せられ、圧倒的な戦力差のある戦いに突っ込んでいった、幕末の戊辰戦争に通じる。どちらも、「降伏」を受け入れることが自分たちの存在意義を自分たちで否定することになりかねないため、難しい点で共通する。
ただし、鶴丸城に篭城した会津藩と異なり、TPLFは拠点で防御を固める陣地戦ではなく、神出鬼没のゲリラ戦を展開している。これは戦闘をズルズルと長期化させ、はまり込んだら抜けられない泥沼のようなものになりやすい。
エチオピア政府・軍はソマリアのテロ対策などで西側先進国に協力する戦略的パートナーだ。ティグライ州での戦闘が激しくなることは、先進国の戦略にも暗い影を落とすといえるだろう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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