米国によるイラン制裁の限界と危険性―UAEの暴走が示すもの
UAEのモハメド軍副司令官とトランプ大統領(2017年5月21日) Jonathan Ernst- REUTERS
・トランプ大統領のイラン核合意の破棄は、スンニ派諸国との協力を念頭に置いたもの
・しかし、スンニ派諸国を率いるサウジアラビアのリーダーシップには限界があり、各国は個別の利益を追求する傾向を強めている
・スンニ派諸国の結束の形骸化は、米国―サウジアラビア―イスラエルの三角同盟による一方的な行動をむしろ生みやすい
米国トランプ政権は現地時間8日、イラン核合意の破棄を発表。イランへの制裁が再開されます。これに対してイランは核合意に残留する方針ですが、国内では穏健派ロウハニ大統領に対する強硬派の批判も高まっており、核開発が加速する懸念が高まっています。
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ただし、トランプ政権が制裁を再開しても、イラン包囲網が成功するかは疑問です。イスラエルやサウジアラビアは米国を支持する立場ですが、核合意に署名した欧米諸国やロシアは破棄に反対しています。のみならず、サウジが主導し、米国が協力を期待するスンニ派諸国の間にも、一致した協力より各国の利益を優先させる動きが広がっています。
とりわけ、サウジとともにスンニ派諸国の結束を主導してきたアラブ首長国連邦(UAE)が、他のスンニ派の利益を脅かしてでも自国の利益を優先させ始めたことは、この亀裂を象徴します。スンニ派諸国に対するサウジのリーダーシップの限界は、米国によるイラン包囲網が穴だらけになる可能性を示唆します。
結束のもろさを露呈したスンニ派諸国
UAEは5月5日、イエメン南部のソコトラ島で部隊を展開し、この地を掌握しました。ソコトラ島は人口6万人あまりの小島で「インド洋のガラパゴス諸島」とも呼ばれる独特な生態系や、古い城壁都市シバムなどがUNESCOの世界遺産に指定されています。
UAEの行動をイエメン政府は「侵略(aggression)」と強く非難しており、サウジアラビア政府が仲介に乗り出していますが、交渉は難航しています。
UAEはしばしば「スンニ派の盟主」サウジアラビアの最も信頼できるパートナーとして振る舞ってきました。そのUAEの暴走は、スンニ派諸国の結束のもろさを浮き彫りにしたといえます。
イエメン内戦とUAE
UAEの暴走は、イエメン内戦のなかで発生しました。
イエメンでは2015年1月、シーア派組織「フーシ派」が首都サヌアを制圧。ハーディ大統領をはじめ、スンニ派中心の政府はアデンに移動しました。これを機に、サウジアラビアをはじめとするスンニ派諸国の有志連合は、イエメン政府を支援してフーシ派への攻撃を開始したのです。
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