コラム

ドイツに訪れる「アベノミクスと同様」の大変化、日本が抜け出せない「緊縮病の宿痾」

2025年03月19日(水)11時50分

こうした意味で、ドイツにおけるメルツ政権誕生は大きな政治的変化であり、背景にはドイツや欧州諸国の長年の経済停滞や社会不安に対する大きな不満がある。それが故に、憲法改正を伴う拡張財政政策発動が実現しつつあるのだから、大きな転換点と位置づけられる。

この政治体制の変化がもたらす経済政策の転換期待が、欧州株の上昇をもたらしたが、まだ十分織り込まれていないのではないか。

米国株、日本株が冴えないそれぞれの理由

一方で、トランプ米政権が打ち出している大規模な関税政策、トランプ大統領などの発言に対する疑念が、2025年の米国株の停滞をもたらしている。ただ、現在の株安は、政策への不確実性によって株式市場の心理が悪化している側面が大きい、と筆者は判断している。

そして、米国株同様に2025年の日本株のパフォーマンスは冴えない。筆者は、2024年末時点では、日本において大規模な減税政策が実現するため、日本株に期待できると判断していた。実際には、石破政権と日本維新の会による「減税潰し」によって、財政政策の発動には至らなかった。

そして、地方創生を掲げる石破政権が長期化すれば、既得権益者への分配政策の財源として増税が実現するリスクが高まる。今後、石破政権は、経済成長を阻害する緊縮的な財政政策を続けるだろう。

こうした日欧の政治情勢の大きな違いを踏まえれば、欧州株市場には期待できても、日本株に期待するのは難しい。参議院選挙を控えて日本の政局変動が起きて、「緊縮病の宿痾」からドイツのように抜け出すシナリオに筆者は期待しているが、やはり難しいのだろうか。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書が2025年1月9日発売。

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