コラム

【2025年経済展望】期待しづらい中国、外部環境に脆弱な日本、2%成長が続く米国

2024年12月27日(金)11時40分

問題は、中国が経済成長を高める政策を実現できるか否か

一方で、トランプ政権から各国に関税引き上げが要求され、サプライチェーンの見直しを迫られる企業が増えるだろう。輸出依存度が高い国は影響を受けざるを得ないが、最も大きな影響を受けるのは、米国から挑戦国と認識されている中国である。

すべての対米輸出品目に60%の関税賦課には至らないと筆者は想定しているが、それでも関税引き上げで米国への輸出はかなり難しくなり、中国の輸出・生産活動には急ブレーキがかかるだろう。問題は、中国自身が経済成長を高める政策を実現するかどうかである。

ただ、12月12日コラムで書いたように、習近平国家主席による政治的な独裁が強まる中で、経済成長を押し上げる財政金融政策が実現する可能性は低いだろう。

かつての日本の経験を踏まえると、政治リーダーが市場経済に嫌悪感を持っていると緊縮志向が強い経済官僚の対応が自ずと続くことになり、脱デフレにつながる政策転換は期待しづらい。

中国ほど酷くはなかったが、2024年の経済成長が冴えなかった日本とドイツはどうなるか。両国がどの程度米国から関税引き上げが要求されるかは現時点では分からないが、自動車などの品目には関税引き上げが実現するだろう。中国経済の停滞が長期化するとすれば、日本とドイツも経済成長を高める実効性を有した財政金融政策がカギになる。

ドイツでは、ロシアからのエネルギー輸入に頼る経済政策が失敗したつけが伸し掛かり、コロナ禍後からの経済の浮上に失敗した。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書が2025年1月9日発売。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

仏極右ルペン氏、トランプ米大統領の強制送還巡る強硬

ビジネス

米12月中古住宅仮契約指数5.5%低下、4カ月連続

ビジネス

ECB当局者、3月追加利下げに異論なしの公算=関係

ワールド

米旅客機衝突墜落事故、死者60人超か 生存者なしの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望している理由
  • 4
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 5
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 6
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 9
    世界一豊かなはずなのに国民は絶望だらけ、コンゴ民…
  • 10
    トランプ支持者の「優しさ」に触れて...ワシントンで…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 6
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 7
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 8
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 9
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 10
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story