フェデリコ・フェリーニの『道』で「欠落の作法」を学んだ
そして何よりも、ザンパノに捨てられたジェルソミーナが、その後にどんな人生を送ってどんな最期を迎えたのか、その描写が全くない。たまたまザンパノが出会った娘の語りだけで全てを終わらせている。
凡庸な脚本家や監督ならば、ここに挙げた要素は全て、絶対に説明するはずだ。ジェルソミーナの最期を追想シーケンスとして撮ることも(安易だが)可能だ。でもフェリーニは説明しない。
映画とは何か。欠落で想像させるメディア。もちろん誘導はする。でも説明しすぎない。そのためのモンタージュでありメタファーだ。20代の頃に『道』を観たときに、そんな作法を学んだような気がする。
『道』(1954年)
監督/フェデリコ・フェリーニ
出演/アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マシーナ
<本誌2025年4月22日号掲載>

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