極北の映画『J005311』は絶対にスクリーンで見るべきだ
あと2つだけ注文がある。車内で1人になった野村一瑛(かずあき)演じる神崎が、ベルトを外すシーンは要らない。
もう1つはカメラワーク。明らかに狙いだとは思うけれど、「寄り」が多すぎる。呼吸で言えば、吸うばかりで吐くがない。当然苦しくなるけれど、その不自由さが映画に貢献しているとは思えない。あくまでも僕の解釈だけど、この映画の質はもっと「引き」を効果的に使うべきと思うのだ。
と苦情を書いたけれど、(もう一回書くが)『J005311』は僕に刺さった。深々と。万人には薦めない。でも極北の映画を体験したいのなら、絶対にスクリーンで観るべき映画だ。
『J005311』(公開中)
©2022 『J005311』製作委員会( キングレコード、PFF)
監督/河野宏紀
出演/野村一瑛、河野宏紀
<本誌2023年6月13日号掲載>
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