「圧倒的なリアルはびくともしない」ご都合主義も吹き飛ばす骨太な映画『やまぶき』
本作についてはもう1つ、16ミリフィルムで撮られた作品であることも付記しなくてはならない。ほぼ際限なく撮ることができるビデオではなく、とてもお金がかかるフィルム。35ミリならばともかく、16ミリでは画質も決して良くない。ビデオのようには長回しできないから、カメラワークも制限される。現場における俳優たちの緊張感も別格のはずだ。
それなのになぜ山﨑樹一郎監督は、今どきほぼあり得ないフィルムにこだわったのか。おそらくだが、理由は1つではない。画質はクリアではないが、より映画的な明滅を想起させる。現場の緊張を良い方向に向けることも可能だろう。
ラスト近くの山吹の母親のエピソードは、正直に書けば微妙だ。サイレントスタンディングとの整合性を考えたのだろうか。
でももう一度書くが、圧倒的なリアルはびくともしない。強靭な作品だ。それがフィルムで撮ることへの決意とダブる。
『やまぶき』(11月5日公開)
©2022 FILM UNION
MANIWA SURVIVANCE
監督/山﨑樹一郎
出演/カン・ユンス、祷キララ、川瀬陽太、和田光沙
<本誌2022年10月25日号掲載>
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