国葬で噴出した「日本人」の同調圧力
ここまで紹介した「日本人」をめぐる発言の数々はかなり異様に映る。
もし8割が国葬賛成といった状況であれば、「少数意見に対する危険な抑圧」という印象が強かっただろう。だが実際には反対の声が多数であるため、現実と願望を取り違えた滑稽さのほうが目立ってしまっている。
結局、安倍元首相の死を政治的に利用する試みは失敗した。
内閣葬でも自民党葬でもなく国葬を選択した岸田首相には、一人の死を国家の物語に結び付け、内閣や自民党という「部分」が日本社会「全体」を取り込めるという判断があっただろう。
だが実際には部分と全体の乖離があまりに大きく、その乖離を埋めたりごまかしたりするために呼び出された言葉の1つが「日本人」だった。
国葬をして何が残ったか。「日本人なら」という同調圧力をかけられても、多くの人は意見を変えなかった。
この社会にある自由の証拠としてその事実は記憶しておきたい。
<2022年10月25日号掲載>
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