コラム

「ありがとう」を広めて、それで差別・偏見が防げるのか

2021年01月18日(月)16時15分

どうして「ありがとう」が選ばれてしまったのか。私はそこに「ありがとう」のハードルの低さを見る。「ありがとう」は具体的な問題を何も指摘せず、誰でも簡単に言える。

反対に「差別をやめよう」は差別者を不快にするだろう。そして反論や攻撃を受ける可能性があるが故に、それを呼び掛けることを躊躇する気持ちもよく分かる。しかし、だからこそ「みんなでその言葉を口にしよう」と、明確な姿勢を打ち出すことに意味があるのではないか。

「ありがとうの輪」に加え、厚労省のサイトには「共感の輪」や「責め合うのではなく励まし合う」といった言葉も掲げられている。ストレスなき調和のイメージだ。

だが、医療従事者やその家族への差別的な行為や言葉に対しては、その場の和を乱してでも、それは許されないと指摘することも必要になる。

だとすれば、本当に広めるべきはその一言を口にするための小さな勇気ではないか。誰も責めず、何も変えない、感謝の言葉ではなく。

<2021年1月12日号掲載>

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プロフィール

望月優大

ライター。ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。著書に『ふたつの日本──「移民国家」の建前と現実』 。移民・外国人に関してなど社会的なテーマを中心に発信を継続。非営利団体などへのアドバイザリーも行っている。

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