コラム

パワハラが起こる3つの原因 日本企業は変われるか

2019年06月05日(水)11時45分

taa22-iStock.

<パワハラ防止法が国会で可決した。パワハラはどんな原因で起こり、それを防ぐにはどんな対策を取るべきか。そして企業にとって、パワハラが「違法になる」だけではない理由とは>

5月末、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を企業に義務付ける関連法が、国会で可決、成立した。パワハラは「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義され、一般的には、地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えた叱責や嫌がらせを行い、精神的・身体的苦痛を与える行為のことだ。

最近はパワハラがニュースになることも多いが、実際のところ、パワハラはどのくらい発生しているのか。また、どんな原因で起こり、それを防ぐために企業はどんな対策を取るべきなのだろうか。

35歳以上の8割以上がパワハラを経験している

人材会社のエン・ジャパンが、パワハラに関する調査を行っている。35歳以上のユーザーを対象にしたもので、今年2月に公表された。

なんと、回答者の8割以上がパワハラを受けた経験があると回答している。パワハラ被害の1位は「精神的な攻撃(公の場での叱責、侮辱、脅迫)」で、被害者の66%が経験。2位は「過大な要求(不要・不可能な業務の強制、仕事の妨害)」で、44%と続く。

男女で差が出たのが、3位の「人間関係からの切り離し(隔離、無視、仲間はずれ)」だ。男性が33%なのに対し、女性は45%と高い。

パワハラを受けた3人に1人が「退職」を選択しているという。採用難の時代に、パワハラで人材を失うのは、企業にとってもったいない話だ。

「書類をやぶり捨て、みんなの前で罵倒、人格を否定」

エン・ジャパンのアンケートで明かされた体験は、生々しく痛々しい。

「上司から椅子を蹴られるのは毎日。さらに作った書類を目の前でやぶり捨てられたり、不可能な仕事を与えられ、時間がかかるとみんなの前で怒鳴られ、人格を否定された。」(41歳男性)

「リーダーからミーティングのスケジュールを知らされず、幾度も遅刻や未参加となった。また、初めて自分が契約を取った案件から理由もなく外されたり、飲み会に1人だけ呼ばれなかったり、事実と異なる評価を言いふらされた。」(44歳女性)

なぜ、このようなことが起こるのか。原因はいくつもあると思われるので書き尽くせないが、典型的なケースを3つ紹介しよう。それを知ることで、パワハラ撲滅の糸口にしてほしい。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩

ワールド

米民主上院議員が25時間以上演説、過去最長 トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story