コラム

「転職で賃金増」の減少を、キャリアコンサルタントとして歓迎する理由

2019年02月08日(金)17時00分

筆者が在籍した頃とは、言葉は少し変わっている。しかし、ニュアンスはほとんど変わっていない。

同社で幹部社員として身近で働いていたのでよく分かるが、代表の柳井正氏は、お客様視点ではないこちら都合のアイデアや、過去の延長で何も挑戦していない企画に対しては、かなり厳しい。正しさへのこだわりも、相当だ。「個人の成長なくして、企業の成長はない」も口癖で、本気で思っている人なのだ。

逆に言うと、この「社外規範」と「社内規範」を理解せずに、有名だから、給与が他より高いから、という理由で入社すると、大変な目にあうはずだ。

過去の延長ではない革新的な企画を出すのは、本当に難しい。本気で自分を成長させるには、時間やコストを含めて、自分へのかなりの投資も必要だ。しかし、それらの行動や考え方を総動員して、今までなかった価値ある服を創ると決めたのがファーストリテイリングである。

共鳴しないまま入社すると地獄かもしれない

その「社外規範」や「社内規範」を知らずに、もしくは共感せずに入社したらどうなるか想像してほしい。仮に、それなりの仕事をすればいい、何事も前例に従えばいいという働き方が習慣になっている人が入社すれば、地獄かもしれない。

逆に、共鳴して入社した人にとっては、自分が出した企画が否定されても、その意味が理解できるだろうし、「ゼロから考え直してほしい」と要望される意味も理解できるだろう。そして、いつしか自分の企画が通り、それで世の中を少しでも変えることができれば、たまらなく嬉しいはずだ。

数年前、ブータンを旅した時に、ガイドがユニクロのダウンを着ているのだと嬉しそうに見せてくれた。私がかつてファーストリテイリングで働いていたことなど、伝えていないのにだ。ブータンにはユニクロの店舗がないので、タイの友人に買ってもらい送ってもらったそうだ。

その時、私はとても嬉しかった。言葉こそ在籍当時から多少変わっているが、「服を変え、世界を変え、常識を変えていく」に共感・共鳴して働いていたからだ。

「社外規範」「社内規範」は、多くの会社で明記されていることが多い。会社によって呼び方は違うが、「企業理念」「社訓」「社是」や、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」などとして書かれている。

経営者は「社外規範」「社内規範」の両方を明確にせよ

ここからは、それらを総称して「理念」と表現するが、経営者の方は、再度、自社の理念が本当に機能しているか見直していただきたい。

そして、経営者自らが、本当に実現したいことか問い直していただきたい。社員全員で新しい理念を作成してもいい。とにかく魂のこもった理念にしてほしいのだ。なぜなら、言葉は素晴らしいが、形骸化している会社も多いからだ。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story