アメリカの鉄鋼・アルミ輸入制限に日本はどう対処すべきか
なぜ日本が除外されなかったのかに関して、日本の新聞やテレビは一様に、「アメリカはこの課税をテコとして日本と自由貿易協定(FTA)を結びたいのだ」という解釈を示した。ただ、そうすると日本と同じくアメリカとFTAを結んでいないEU、ブラジル、アルゼンチンが除外されていることに対する説明がつかない。
どうもこの解釈は、本当は恋人が心変わりしてしまったのに、「彼が私にこんな意地悪をするのは、きっと私を愛しているからなのね」と思い込もうとしている可哀想な女性みたいである。要するにアメリカ(トランプ大統領)の日本に対する感情が冷めていることを直視しない、おめでたい解釈なのではないだろうか。
実際にトランプ大統領自身が鉄鋼・アルミに対する課税についてどう説明したかというと、「日本の安倍首相はいい奴で、友達なんだけど、彼はニヤニヤしながら、長い間アメリカさんにはいい思いをさせてもらったぜ、と思っているのさ。でもそんな日々も今日で終わりだ」
つまり、彼の頭の中には、安倍首相がいかに親しくしてくれても、日本はアメリカに貿易赤字をもたらす悪い奴、という固定観念が牢固として居座っており、今回の鉄鋼・アルミ課税で日本を除外しないのは当然のことだと考えていることがわかる。
安全保障は表向きの口実
このトランプ大統領の発言からみると、要するに安全保障のためというのは口実にすぎず、彼はとにかくアメリカに貿易赤字をもたらす国を何とかして叩きたいだけのようである。
そういう観点から再び先ほどの表をみると、二国間貿易でアメリカ側が赤字である相手国は、特殊な事情(EUは手ごわい、韓国はFTA見直しに応じた、カナダとメキシコは隣国)がなければ課税していることがわかる。
この先日本を待っているものは、FTAを結んでウィン・ウィンの関係を目指しましょう、なんていう暖かい交渉ではなく、アメリカの対日貿易赤字を減らすために日本はアメリカ車を10万台輸入しろ、といったたぐいのあからさまな要求だと思えてならない。
いくらなんでもそんな無茶な要求がありうるだろうか、と思う人も多いだろう。だが、日米通商摩擦が燃え上がっていた1994年2月、アメリカの携帯電話メーカー、モトローラ社はKDDIの前身であるIDOに対して、アメリカ政府の対日圧力を背景に「22万5000台の携帯電話機を買え」と要求したことがある。IDOがそれを拒否したところ、3日後にアメリカ政府は日本が不公正貿易を行っているとして制裁を発表した。
トランプ大統領のなかでは、あの時代の日本観が今も変わっていない。だとすれば、あの時代のような無体な要求が飛び出してくる可能性が高いように思う。
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