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「人口減少」日本を救う戦略はこの2国に学べ!
イスラエルの躍進の秘訣は、ハイテク技術に優れた国造りという「グランドデザイン」を描くと同時に、国のマネジメント体制として、ハイテク技術に特化した国家構造やシステムを構築し「実践」したことが指摘される。
イスラエルにはグーグル、アップル、マイクロソフト、インテルなど世界トップレベルのグローバル企業が多数進出して研究開発拠点を設けている。また同国は「第2のシリコンバレー」とも呼ばれ、ハイテク技術やスタートアップのエコシステム(ビジネスの生態系)を構築している。
実際、米スタートアップゲノム社による17年のスタートアップのエコシステム世界ランキングにおいて、イスラエルのテルアビブが世界第6位にランクされている。1位のシリコンバレーのほかニューヨークやロンドン、北京といった大都市に次ぐ評価を得ているのだ。
ガラパゴスに甘んじた日本
ではスイスとイスラエルの共通点から、日本が世界に影響を与えるようなイノベーションを起こし、国際競争力を高めていくポイントを考えてみたい。
1点目は、両国とも国家レベルでの問題や高い危機感をイノベーションの源泉に転じてきたことである。
スイスでは、例えば70年代に日本メーカーがクオーツ時計を実用化したことで時計産業が壊滅的な影響を受けたことを、現在でも「クオーツ・ショック」として国全体の教訓にしている。当時、機械式時計が主流だったスイスの時計産業は存続の危機を迎えた。だが、スウォッチが「低価格×ファッショナブル」というポジショニング戦略で息を吹き返し、その後、同国の名門ブランドであるオメガ、ロンジン、ラドーなどを続々と買収。グループ全体でのブランド戦略が功を奏し、世界一の時計メーカーとなった。現在の時計メーカーの売上高ランキングでは、1位スウォッチ・グループ、2位リシュモン・グループとスイス勢が上位を占めている。
離散と迫害という悲劇の歴史を持つイスラエルも同様だ。政治・宗教・信条等が異なる国々に囲まれた危機感をイノベーションの源泉としてきた。
その点、日本は少子高齢化や構造的な人手不足、都市化・過疎化で「社会問題の先進国」ともいえる。課題を好機と捉えれば、世界に先駆けてイノベーションを起こせる可能性もある。
2点目は、両国とも小国で国内市場だけではビジネスが成立しないことから、最初から世界を目指すしかないという過酷な環境の中で事業を展開してきたことだ。スイスでは国内市場の規模が小さいという難点に対して、スイスブランドという競争優位を最大限に生かし、初めから世界市場を視野に競争力を高めてきた。極めて不利な地理的環境に置かれたイスラエルでも、製造業よりもハイテク技術分野の開発という知識集約型産業に特化し、国内市場を超えて世界市場を目指してスタートすることで競争力を高めてきた。
日本は幸いにも人口が多く国内市場だけで事業が成立する環境だったため、最初から世界市場を目指すという企業は少なかった。それが「ガラパゴス」とも揶揄される状況を生んできた要因でもある。もっとも最近では、メルカリのように創業時からグローバルレベルでのメガテック企業を目指す企業も増えてきている。「最初から世界の舞台で勝負すること」を日本のデフォルト(初期設定)とすることを促進する産学官の取り組みが重要となろう。
最後に、あえてイスラエルと日本の最大の違いを指摘しておきたい。筆者が国費招聘プログラム団長としてイスラエルを視察して驚かされたのは、起業に何度か失敗した人のほうが投資家からのスタートアップ資金を集めやすい、という状況だった。失敗しても取り返しができる国、むしろ失敗経験を高く評価する国がイスラエルなのだ。
日本は現実的には「失敗すると取り返しがつかない国」であり、その慣習が、イノベーションを生み出すことやリスクを取ることを阻害している。失敗から学ぶことを真に評価する国に生まれ変われるかどうか、日本の真価が問われていると言えよう。
<ニューズウィーク日本版4月3日発売号(2018年4月10日号)は「『人口減少』日本を救う 小国の知恵」特集。縮小ニッポンを救う手立てはあるのか? ノルウェー、イスラエル、スイス......人口が少なくても、豊かで幸福で国際競争力も高い「小さき実力国」から学べること。この記事は特集より>
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