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シャープのV字回復は本物か? IoT企業への変革は成功するか?
3番目に指摘したいのは、シャープのビジネスモデルについてである。
同社が決算結果とともに発表した「新生シャープの方向性」のなかでは、バリューチェーンを表す「ビジネスモデル」について、これまでの「商品企画・技術開発・生産・販売」から、「事業企画・技術開発・スマートファクトリー・販売・ソリューション&サービス」に変革していくことが明記されている。
確かに最近のシャープの商品を見ると、単なる「商品開発」ではなく「事業企画」という視座から生まれたと感じさせる商品も少なくない。
もっとも、IoTのプラットフォームを実現しつつあるメガテック企業では、消費者の経験価値から志向し、組織における事業を横断的にとらえてソリューションを提供しようという姿勢を感じさせることが多い。シャープが新たな「ビジネスモデル」を表現するのに使っている「事業企画」という言葉自体に違和感を覚えるのは筆者だけではないだろう。
最後に、シャープを傘下におさめている台湾のホンハイは、2016年度の決算において、創業43年間で初めて業績が前年割れとなった。数々のサクセスストーリーを積み重ねてきたホンハイでも、約16兆円にも上る売上高を継続して高めていくのはもはや容易ではない段階に差し掛かっており、同社にとってシャープは成長戦略の中核なのである。
このようななかで、さらにはシャープの経営不振の主因となった液晶事業自体に回復の道筋がまだ見えないなかで、ホンハイにとっても、シャープにとっても、中国・広州で進めている約1兆円にも上る世界最大の8K液晶パネル工場の成否がまさに企業の命運を左右する戦略的投資であることは明らかである。
8Kの技術や商品は、一般のテレビのみならず、医療分野から安全監視システムに至るまで、裾野も広い成長分野として期待されている。もっとも、8Kの技術や機能価値だけで1兆円にも上る巨額当投資を回収していくのは容易ではないだろう。
シャープが自ら掲げている上記の「ビジネスモデル」のバリューチェーンのなかに「マーケティング」という重要な要素が欠けているなかで、また、ホンハイが規模の経済というゲームのルールに未だ依存しているように見えるなかで、シャープには、誰のため・何のためのIoTであるかを見失うことのないように、消費者のニーズに真に寄り添い、消費者の経験価値を高めていく努力を怠らないことを期待していきたい。
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