コラム

根拠なきデマと誹謗中傷に新宿案内人がすべてお答えする

2018年09月19日(水)17時10分

皮肉を誤読されたり、間違った翻訳をされたり

「李は本音では中国のために政治をやろうとしている」という批判もツイッターでよくリツイートされている。ある自称・元中国人が続けている「李さんの本音シリーズ」は私を批判したい人たちの間で特に人気のようだ。

lee180918-2.png

「今日の歴史出来事!日本が降伏したぞ!我々勝ったぜ!」と「翻訳」しているが、この微博の書き込みを理解するのは彼には難しすぎたかもしれない。これは中国共産党に対する皮肉なのだ。

そもそも、日本との戦争に勝ったのは共産党でなく国民党だった。「我们胜利淫了」(我々が勝った)の「淫」は中国語で勝つという意味の「赢」と発音がほとんど同じ。国民党から勝利を盗んだ共産党が今の中国を支配しているが、彼らは自分たちの支配を続けるために厳しいネット検閲を続けながら、こんな「黄色(エロ)」な写真は黙認している......という皮肉を、転発(リツイート)とこの文章で表現したのだ。

この写真はどこかの中国人ネットユーザーが自分で探してアップしたもので、私のものでも何でもない。文章の前半の「日本投降虚了」(日本が降伏した)の「虚」は、中国語で負けるという意味の「输」と発音が似ていて、「体が弱くなる」という意味。決して日本を馬鹿にしたわけではない。

意図的な文章の「切り取り」も多い。

lee180918-3b.png

「この言葉をきっかけに、彼は中国人の為に頑張ろうと政治家の道に向かった。結果、僅か282票の差で落選。」

これは、明らかに間違った翻訳をしているケースだ。正しい訳は、

「この言葉で彼は日本の政治に飛び込む自信がついた。日本に住む華人のために何かできるのではないかと」

私が選挙期間中からずっと訴えてきたのは、日本人と在日外国人がお互いを理解するために努力する、ということ。在日中国人だけでなく、ほかの国出身で日本に住む人のためにももちろん働く。それが結局は日本人のためになるからだ。

これだけ世界が一体化している時代に、もう日本が国を閉ざすことはできない。在日外国人と共に暮らすことを前提に、互いが互いを理解する必要がある。その仲介役になるのが、私が政治家を目指した大きな目的の1つだ。「日本に住む華人」はもちろん大陸出身者だけでなく、台湾人や香港人も含まれる。

私は日本が好きだから日本人になったのだ

lee180918-4b.png

意図的かどうか分からないが、誤読されたケースもある。

「私は中国人でも日本人でもない。私は私だ。死ぬまでずっとここにいるかも。ここ好きだけど、この国は私と関係あると思わない」

正確な訳はこうだ。

「李小牧はある意味、歌舞伎町の『主人』になったといえるが、彼はいつも自分が旅人だと思っている。『私は自分が中国人だと思わないが、日本人だとも思わない。私は私だ。たぶんここに骨を埋めることになるだろう。死ぬ場所もここだ。私はここが好きだ。しかし、この国が私の国であるかどうかは関係がない』」

私が言いたかったのは、私のふるさとはほかでもない歌舞伎町である、ということだ。日本国籍を取得する前から、私は歌舞伎町をふるさとだと思ってきた。「この国が私の国であるかどうかは関係がない」とは、私が歌舞伎町を愛しているのは日本国籍を取得する前も取得した後も変わらない、という意味だ。当たり前だが、私は日本が好きだから30年間も日本に住んでいるし、日本人になった。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ

キーワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story