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岐阜県の盗撮疑惑事件で垣間見えた、外国人技能実習制度の闇
私が切々と訴え続けると、ついに警官は折れた。証拠物の監視カメラを預かり、検査する。もし盗撮の事実が明らかになれば、会社の同意がなくとも被害届を受理する、と(なお、後述する中国メディア「澎湃新聞」の報道によると、大垣警察署の担当者はやはり会社が申請しないかぎり被害届は受理できないと発言したという)。
警察署を離れた後、私は彼女たちの話を聞いた。そこで知ったのは、あまりにも過酷な生活だった。例えば、寮の水道の蛇口には布が巻き付けてある。理由を聞くと、水に泥が混じっているからだという。その布をほどいてみると、確かにそのとおり。中には土がたまっていた。泥混じりの水が流れてくる蛇口の、布でこした水を飲んでいるのだ。
浴室は真冬でも十分なお湯が出ない。湯沸かし器が古いからだろうか、お湯は出たり出なかったり。彼女たちは冬の寒い時期には週1回程度しかシャワーを浴びないという。一方、部屋には冷房もなく、真夏には倒れそうな暑さになる。
煮炊きには井戸水を使うというが、その水には虫が浮かんでいるのだとか。日本人従業員はミネラルウォーターを買って飲料水にしているが、給与が日本人の半分という彼女たちは水を買うことすらためらわれる。あまりの劣悪な待遇に私は言葉を失った。
それでも彼女たちは前向きだった。東京に帰る新幹線に乗る私に、感謝の言葉を述べ、微笑みながら「ありがとう! いつかご飯をおごりますね」と話し掛けてくる。私は笑顔を返すことができなかった。
まるで奴隷、人権はどこに消えてしまったのか
私は「元・中国人、現・日本人」だ。自らの決断で日本国籍を選んだのだ。生まれたときから日本人だった人以上に、日本人であることに誇りを抱いている。
だが、彼女たちの笑顔を見て、私は恥ずかしい気持ちを抱いた。これが世界に名だたる先進国・日本の姿なのだろうか。外国からやって来た若い女性をこれほど過酷な環境で働かせるばかりか、不安な事件が起きても誰一人親身に寄り添おうとはしない。
技能実習生は日本に技術を学びにきた学生だ。言葉も文化も分からない異国の地で暮らせば不安があって当然。そうした不安を解消する手段を用意しておかなくては、とても学べるはずもない。
昨今、国内外から外国人技能実習制度に対する強い批判が聞かれるようになった。日本の技術を学ぶとは建て前だけ。体のいい奴隷ではないか、と。思うに監視カメラは本質的な問題ではない。技能実習生たちが働く日本企業、派遣した仲介機関、そして現地の日本社会、それら全てが彼女たちを本当の意味で受け入れていなかったのではないか。彼女たちのことを考えていなかったのではないか。
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