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「爆買い」なき中国ビジネスでいちばん大切なこと
「なるほど、体験の時代か! よし日本の伝統文化を味わってもらおう!」と早合点する人は中国ビジネスに向いていない。日本人が伝えたい体験ではなく、中国人が求める体験を提供しなければ成功は難しい。中国人旅行客と向き合い、「友達がびっくりするような場所で自撮りしたい」「スタバの日本限定品を飲んでみたい」「日本の美容室でカットしたい」といった生の声を受け止めることが必要だ。
先ほども言ったが、私が経営するレストラン、湖南菜館には中国人旅行客が殺到している。実はこれも「コト消費」の一環だ。自分で言うのもなんだが、私は中国の人気テレビ番組にたびたび出演する有名人。日本に来て、私と記念写真を撮りたいという中国人旅行客は少なくない。私に会えるまで何日も店に通ってくるという熱烈なファンまでいた。
政策変更とニセモノに苦しむ越境ECビジネス
爆買いと並ぶ中国向けビジネスとして脚光を浴びたのが「越境EC(電子商取引)」だ。中国の保税区に物流倉庫を持ち、そこからネットショッピングサイトを通じて、日本の商品を中国人消費者に販売するというビジネスモデル。中国人にとっては、海外に行かなくても海外製品をネットで買えるので、ブームになってきた。コラム「選挙に落ちたら、貿易会社の社長になれた話」で紹介したとおり、私も貿易会社社長として越境ビジネスに取り組んでいる。
ところが今、越境EC業界も「変化の速さ」に苦しめられている。こちらの変化は中国の政策だ。今年4月に導入された越境EC新政策では、販売できる商品の種類が限定されたほか、手続きや税金が大きく変更された。結果として今までの自由さが失われてしまった。当局と業者の駆け引きが続いているが、中国の越境EC企業には「もう無理だ」と匙を投げるところもあらわれている。
さらにもう一つの「速さ」もハードルだ。それは「ニセモノ出現の速さ」。ある商品が人気になると、すぐにニセモノやパチモノが大量に出現するのだ。慎重に選んで正規品を買ってくれる消費者もいるが、なにせ13億人の大国だけによく分からないままニセモノをつかまされる人もごまんといる。一生懸命宣伝して認知度を上げブランドを構築したと思ったら、大量のニセモノ商品が現れて売れなくなってしまう。
中国EC最大手アリババの創業者ジャック・マー氏は6月14日に投資家向け会合で講演し、ネットで流通しているコピー商品は正規品と同じ工場で製造されていることが多く、品質面では正規品と差はない、と発言した。実際に高品質のニセモノがあることも事実だが、問題はそこにはない。まじめにブランド構築に時間とお金をかけた企業が損をする状況ではまっとうなビジネスは育たない。
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