コラム

熊本地震に寄せられた中国人の温かい言葉(とお金)

2016年04月28日(木)14時33分

阿蘇神社近くの路地裏で食事をしていた被災者たちの姿(写真はすべて筆者)

 皆さん、こんにちは。「熊本案内人」の李小牧です。「新宿案内人じゃなかったの?!」とツッコミが飛んできそうだが、今だけは地震被害に苦しむ熊本のために全力投球する所存。執筆時(21日)の朝、熊本から東京に帰ってきたばかりだが、この記事が掲載される頃には再び熊本にいるはずだ。このコラムでは現地の状況、そして被害を知った中国人の反応についてお伝えしたい。

「中国人に伝えたい」と被災地に向かった

 商談、ビジネスイベントでのスピーチ、中国で最も人気があるテレビトークショー「鏘鏘三人行」の収録......5泊6日で中国5都市を回るという強行軍の旅を終えた私は、へとへとになって日本に戻ってきた。それが4月14日、熊本地震の起きた日だった。すぐにも現地に飛びたかったが、東京でやるべき仕事は山積み。どうしようか悩んでいるうちに16日未明の本震を迎えることになった。これはもう行くしかない。

 私は5年前の東日本大震災でも取材をし、中国向けに情報を発信した。今回の熊本地震でも、微力ながらも被災地の力になりたい、被災地の状況を中国に伝えたい、という思いがわきあがる。

 被災地入りにはお金が必要。というわけで妻に頭を下げたところ、ぽんと50万円貸してくれた。財布のひもがとてつもなく固く、私の選挙出馬にも反対した妻だが、使うべき時は心得ているということか。いやはや惚れ直してしまう(笑)。

【参考記事】熊本地震、信頼できる災害情報・安否情報をネットで確認する

 かくして本震の翌日、17日午前には、私は5人のスタッフを引き連れて福岡空港に到着していた(前回のコラムでお伝えしたとおり、私はいま、ウェブメディアの会社の社長でもある)。あとはレンタカーを借りて熊本に向かい、連日の取材だ。

lee160428-b2.jpg

被災直後だったので、通行止めになっていた道もあった。レンタカーの中で地図を見る筆者

 熊本を訪問したのは4年ぶりだった。前回は中国メディアの取材のアテンドだ。その時とはまったく違う、壊れた住宅、真っ暗の繁華街という変わり果てた光景に胸が痛む。熊本市、益城町、南阿蘇村と各地を訪問し、取材して回った。崩れ落ちた阿蘇大橋もこの目で見た。車の立ち入りが禁止されているので、2キロ近く歩いてようやくたどりついた現場。途中、ぐしゃぐしゃに潰れた建物が目に入った。

lee160428-c2.jpg

避難所も取材させてもらった。旅行者に定住者と外国出身者も少なくないため、取材の際には必ず「外国の方はいますか?」と質問した

【参考記事】被災者の本音、女性が抱える避難所ストレス

 楼門が完全に潰れた阿蘇神社も、一部施設を避難所として開放した熊本刑務所も取材した。刑務所を取材した海外メディアは私たちが2組目だった。職員用道場を避難所として使っていたが、そこに200人以上の被災者を収用しているとのこと。板の間にシートをしいただけという環境だった。ちなみに約500人の受刑者に負傷者はいないそうだ。

lee160428-d2.jpg

被害の大きさに言葉を失う

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story