コラム

<3分解説>アゼルバイジャン:アルメニアと深まる対立、万博に仲良く出展していたのは遠い過去

2023年10月19日(木)11時16分
アゼルバイジャンの燃える山「ヤナル・ダグ」

燃える山「ヤナル・ダグ」(写真AC)

<万博開催を日本、ロシアと三つ巴で争ったアゼルバイジャンは「火の国」。首都バクーで建設されている世界一高いビルの完成はいつ?>

新型コロナウイルスの流行も収まり、アフターコロナでインバウンド・アウトバウンドともに旅をしたい人々が世界にはあふれる。そうした中、日本は2025年大阪・関西万博の開催を控え、国際理解、多文化共生の機運が高まっている。世界各国から150を超す国・組織が既に参加を表明。「そんな国あったんだ」と驚くこともあるだろう。各国パビリオンの目玉の展示はなにか。世界中の珍しい装飾品や民芸品、美味しい食べ物が一堂に会するまたとない機会だ。連載では、参加表明をしている各国を、手軽にさくっと理解できるように紹介していく。

アゼルバイジャンの国旗 アゼルバイジャン共和国

ロシアによるウクライナ侵攻から1年半が経過した今、その混乱や不協和は近隣諸国の和平にも緊張と混乱を及ぼしている。ロシアと北で接するアゼルバイジャンは長年、隣国アルメニアと紛争問題を抱えてきた。9月に入って軍事攻撃に出たアゼルバイジャン、なぜこのタイミングだったのか。20年前に開催された「愛・地球博」では共同でパビリオンを出していた2カ国の関係は修復し難いのか。

大国に囲まれ、複雑な事情を抱えるアゼルバイジャンの横顔を3分で読み解く。

アゼルバイジャンの地図(写真AC)

概要

面積:8万6,600平方キロメートル(日本の約4分の1)
首都:バクー
人口:1,040万人(2023年:国連人口基金)
一人当たりGDP:6,826ドル(2022年:IMF推計値)

略史

1918年 アゼルバイジャン人民共和国独立宣言
1920年 バクーにソビエト政権樹立、アゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国成立
1936年 アゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国として連邦に加盟
1989年 共和国主権宣言
1991年 「アゼルバイジャン共和国」に国名変更、独立宣言
1992年 日本と外交関係樹立
1994年 アゼルバイジャン領内でアルメニア系住民が多く住む「ナゴルノ・カラバフ」をめぐるアルメニアとの紛争に関し、停戦協定締結
2020年 ナゴルノ・カラバフをめぐり軍事衝突、ロシアの仲介で3カ国が停戦合意
2023年 9月19日、アゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフ攻撃、翌20日に停戦合意

過去の万博

2020年ドバイ万博:「未来への種」がテーマ。今、未来に投資することによってのみ、人々は持続可能な明日を確保することができる。葉っぱの形をした屋根は、無限のエネルギープロセスを象徴、葉の一枚一枚が太陽エネルギーを生命力に変える。(紹介文をChatGPTで翻訳・要約、加筆)

2005年愛知万博:「コーカサス共同館」としてアルメニア共和国、グルジア(現ジョージア)と共に出展。「健康と長寿」をテーマに、古くから文明の地として栄えた歴史を踏まえ、各国の地図や山々の写真、絵画を展示。バクーはかつてのシルクロードの中継地で、城壁に囲まれた旧市街もある」と紹介された。

特産品

ワイン:ワイン発祥の地とされるコーカサス地方の構成国として知られ、製造の起源は6000~7000年前に遡る

景勝地

城塞都市バクーなど(世界遺産)

城塞都市バクー

城塞都市バクー(写真AC)

燃える山「ヤナル・ダグ

著名人

リヒャルト・ゾルゲ(1895~1944年)...ソ連のスパイ。日本で諜報活動を行っていたスパイ組織の構成員らが逮捕された「ゾルゲ事件」の首謀者。巣鴨プリズンで死刑に処された。バクー出身

アリー・ハーメネイー(1939年~)...イランの最高指導者。東アーザルバーイジャーン州ハーメネ出身の父はアゼルバイジャン人だった

ガルリ・カスパロフ(1963年~)...チェスの元世界チャンピオンで、15年もの間その地位に君臨。1996年にIBMのチェス用スーパーコンピュータ「ディープブルー」と対戦して勝利するも、翌97年には敗北して話題に

プロフィール

くらふと

主に小中高生向けに異文化理解や世界の諸問題に関するワークショップなどの活動を行う東京外国語大学のボランティアサークル。(協力:南龍太)
Instagram:@tufs_kraft
X:@TUFS_KRAFT

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story