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東金市女児殺害事件から15年──「不審者探し」の副作用と、日本の防犯対策に欠けた視点とは?
落書きや放置自転車、不法投棄ゴミなど秩序の乱れた場所も犯罪の温床になりやすい(写真はイメージです) Japanesescape_Footages-iStock
<「不審者」を探すパトロールに意味はない。事件の現場には共通点がある。効果的で、副作用を起こさない防犯対策とは?>
千葉県東金市で2008年、路上で、保育園児(5歳)の遺体が全裸の状態で発見された事件は、今月21日で発生から15年を迎える。そこで今回は、この女児殺害事件を素材にして、犯罪予測の方法を考察してみたい。
危険は予測できれば回避できる。犯罪もまた然り。予測できれば予防できるはずだ。問題は、どのようにして予測するかである。
日本では、「だれ」が犯罪を企図しているかを見極めることによって、犯罪を予測しようとしている。そのため、学校では、子どもたちに「不審者に気をつけて」と教え、地域では、不審者を探すパトロールが行われている。
しかし、不審者という名の「危ない人」から、犯罪を予測することは不可能に近い。なぜなら、危ないかどうかは「人」の姿を見ただけでは分からないからだ。「人」の心の中は見えないし、「危ない人」はできるだけ目立たないように振る舞うはずである。また、まだ犯罪をしていない「人」を犯罪者扱いすると、人権侵害になる。さらに、子どもに不審者を発見せよと無理な要求をすると、この世は敵だらけと思わせてしまい、周りの大人を信じられない子どもが増えてしまう。
犯罪は「成功しそうな場所」で起こる
このように、「不審者」に注目するやり方は、防犯効果が期待できず、副作用さえ起こす。したがって、この方法は間違っていると言わざるを得ない。正しい方法は、防犯効果が期待でき、しかも副作用を起こさないものだ。それは、見ただけで分かる「危ない場所」に注目するやり方で、「犯罪機会論」と呼ばれている。
犯罪学では、人に注目する立場を「犯罪原因論」、場所に注目する立場を「犯罪機会論」と呼んでいる。海外では、犯罪原因論が犯罪者の改善更生の分野を担当し、犯罪機会論が防犯の分野を担当している。
犯罪機会論とは、犯罪の機会を与えないことによって犯罪を未然に防止しようとする考え方だ。ここで言う犯罪の機会とは、犯罪が成功しそうな状況のこと。つまり、犯罪を行いたい者も、手当たりしだいに犯行に及ぶのではなく、犯罪が成功しそうな場合にのみ犯行に及ぶと考えるわけだ。
とすれば、犯罪者は場所を選んでくるはずである。なぜなら、場所には、犯罪が成功しそうな場所と失敗しそうな場所があるからだ。犯罪が成功しそうな場所とは、目的が達成できて、しかも捕まりそうにない場所。そんな場所では、犯罪をしたくなるかもしれない。逆に、犯罪が失敗しそうな場所では、普通は犯罪を諦める。
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