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「右肩下がり」岸田政権の命運を左右する分岐点
統一地方選挙という試金石
その前の試金石となるのは、4月の統一地方選だ。ここで勝利を収めたと言える結果になれば長期政権に向けての弾みが付き、惨敗したとなれば、来る国政選挙に向けて求心力は失われていく。いわば岸田政権の命運を左右する「分岐点」になる可能性があるのだ。特に重要なのは大阪府知事選で、大阪で圧倒的な人気を誇る日本維新の会の「看板」吉村洋文知事相手に勝負を挑める候補者を野党側(自民党は大阪では「野党」だ)が擁立できるかがポイントとなる。中央政界で維新は立民と共闘しているが、大阪政界では事情が全く異なる。そうした「ねじれ」を有権者がどう理解するか、選挙の協力体制と開票結果が中央政界における政党間パワーバランスにどのような影響を及ぼすかも含めて、大阪府知事選は注目される。
通常国会ではこれ以外に、不正競争防止法が規定する「外国公務員贈賄罪」の厳罰化といった重要な法改正も予定されている。また、「文書通信交通滞在費」改め「調査研究広報滞在費」の使途公開・未使用分国庫返納といった改革議論は積み残されたままで、防衛増税の国民負担を求めることと表裏一体に、国会議員による自律的経費削減に焦点が当てられることになろう。
ところで、岸田首相は施政方針演説を次のようなエピソードで始めた。「欧米歴訪の際にある首脳から『日本の国会はなぜ"parliament"ではなく"Diet"と呼ぶのか』と問われ調べたところ、Dietの語源はラテン語の『集まる日』だった。国民の付託を受けた我々議員が、まさに、本日、この議場に集まり、国会での議論がスタートいたします」と言う内容だ。
この点について、浅野雅巳・成蹊大学名誉教授の論文によると、Dietは、「一日」という意味のラテン語Diēsが語源であり、それが一日(がかり)の旅や会議という意味に転じ、さらにドイツ語のtag(会議)になった。神聖ローマ帝国の「帝国会議」はReichstagと言ったが、これが英語に翻訳された時にDietとされたという。
これに対して、Parliamentは古フランス語のparlement(喋ること、英speaking)が語源で、12世紀以降の英国で発達した「議会」(Parliament)制度が普及したことに伴って、世界中で「議会=parliament」として一般呼称化したが、日本は明治期にドイツ(プロイセン)の帝国会議体制を参考にしたため、明治憲法下の「帝国議会」がImperial Dietと翻訳され、そのDietがそのまま戦後の「国会」にも引き継がれたということである。
つまり、プロイセンの議会制度を継受したという歴史的な経緯がゆえということだが、岸田首相はDietの語源だけを取り上げ、speak(喋ること)が主眼のParliamentの説明を省いた。それは、師走に党内で炎上しかけた「防衛増税」について、今はもう何も「喋りたくない」という気持ちが現われたのか、あるいはひょっとして、演説中すぐ後ろに鎮座する細田博之衆議院議長(ちなみに衆議院議長の英訳はSpeaker)が、旧統一教会との関係について記者会見を拒んでいることに配慮したのか――それは分からない(その後、衆院議長公邸で細田議長による懇談〔tag〕が実施された)。
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