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「右肩下がり」岸田政権の命運を左右する分岐点
岸田首相は難局を脱することができるか?(2023年1月23日)
<通常国会が開会した。「聞く力」を封印し、「歴史的使命」を打ち出した強気の岸田首相だが、支持率は今も30%前後に低迷している。統一教会問題、防衛増税、党内の反旗......数々の難題を乗り越えた先には、春の統一地方選、特に大阪府知事選という大きなハードルが待つ>
1月23日に通常国会が始まった。6月21日まで150日間の長丁場は、低支持率に喘ぐ岸田文雄首相には正念場となるであろう。政治の流れは早い。1年前の通常国会を振り返ってみると、岸田政権の支持率は当時60%前後もあった。それが去年の後半以降、旧統一教会問題や国葬実施、閣僚不祥事、防衛増税などさまざまな問題が噴出して政権支持率は瞬く間に半減し、30%前後まで落ち込んだ。岸田首相にとってこの通常国会は「退陣に追い込まれる自沈の150日間」となるか、それとも「反転攻勢をかけて長期政権の礎を築く150日間」となるだろうか――。
23日の施政方針演説にマスクを外して臨んだ岸田首相は、気力が充実している様子に見えた。「明治維新から77年後に大戦の終戦があり、くしくもそれから更に77年が経ったのが今だ」として、日本が「歴史の分岐点」に立っていることを強調し、「私に課せられた歴史的な使命を果たすために、全身全霊を尽くします」という言葉で演説を締めくくった。
「歴史的な使命」という言葉が首相の施政方針演説に登場するのは、2020年1月20日に安倍晋三首相(当時)が憲法改正の文脈で用いて以来だろう。「聞く力」を強調した昨年の施政方針演説から打って変わって、「私に課せられた歴史的使命」というフレーズを言い切ったところに、岸田流の「強気」の姿勢が垣間見られる。
施政方針演説で岸田首相は、5年間で43兆円の防衛予算確保、反撃能力(敵基地攻撃能力)保有などの「防衛力の抜本的強化」や、物価高対策、構造的賃上げ、GX・DX・イノベーション・スタートアップへの投資などの「新しい資本主義」、持続的で包摂的な「新しい資本主義」を次の段階に進めるものとしての「こども・子育て政策」といった政策を力強く語った。
しかし、「増税」という言葉は一切使わず、また経済安全保障政策で焦点となっている「セキュリティ・クリアランス(機密情報を扱う職員の適格性確認制度)」「人権デューデリジェンス(企業サプライチェーンにおける人権侵害リスクの精査)」「ウイグル人権侵害」には言及しなかった。閣僚が相次いで辞任に追い込まれた「政治とカネ」の問題に対する言及もわずかで、「信頼こそが、政治の一番大切な基盤であると考えてきた1人の政治家としてざんきに耐えない。再び起きないように、改革にも取り組んでいく」と述べはしたが、具体策には乏しい。これが岸田政権の優先順位ということなのだろう。
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