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「不平等な特権待遇」国会議員の文通費に知られざる歴史あり(1)
まぼろしに終わったクーポン式郵便切手購入券
1947年(昭和22年)に開催された第1回国会ではさっそく通信費を「月1000円」に値上げする議論が始まっている。国会会議録によると、同年9月の衆議院議員運営委員会(議運)で初代事務総長・大池眞が現行の月125円という規定について、「当時衆議院の方では二百五十円くらいが適当という案で進んでおつたのを、大藏省で査定をした数字でありますが、その後通信料は上り、会期は長くなつたので、千円くらいが正しかろうということであります。」と説明している(議員立法なので事務総長が説明)。
立法当時、もともと「250円」を想定していたが大蔵省の査定で半額の「125円」に減額させられたという指摘は興味深いが、いきなり8倍の「1000円」にするという理由が、「通信費の上昇」と「国会会期の長期化」だとされていることも注目される。昭和22年当時はいわゆる復金インフレの最中にあり、また国会の会期も、帝国議会時代の3カ月から新憲法下での150日(約5カ月)に長期化したことは事実だが、より重要なことは「国会会期中に使った通信費用」を賄うのが通信費だとする「実費性」の発想が基底にあったことである。実費だからこそ、算出の基礎となる「期間」と「料金」が問題となったのだ。
月1000円への値上げ案は、「その後の交渉の結果、現金よりもむしろ郵便切手購入券をクーポン式にやるのがよかろうということになりました」(大池事務総長)として、現金の供与ではなく郵便切手購入券を「クーポン式」で与える改正案に昇華する。昭和22年10月22日の議院運営委員会で「その請求に従い月額千円以内において郵便切手購入券を受ける。」という歳費法9条「修正案」が議論された。当時の初代議運委員長は、精力的な政治活動で「人間機関車」の異名を取った浅沼稲次郎(日本社会党衆議院議員)。「議員の請求」を前提として、1000円を「上限」に「郵便切手購入券」を供与するという改正案は、現在の「使途を定めず月100万円を丸投げ式に供与する」制度と比べると、はるかに「経費節約」の意識が高い。
ところが、この画期的な改正案は幻に終わった。
昭和22年12月の第一次改正では「補正予算の措置がつかない」という理由で、改正案から通信費部分が丸ごと削除されてしまった。翌昭和23年7月の第二次改正で成立するかと思いきや、「現下の経済事情に即応するよう必要な増額を行わんとする」という理由で従前と全く同じ表現を使った「通信費として月額千円を受ける」という改正案が提出されて成立したのである。これは、単に125円を1000円に値上げする内容だ。守旧派の「巻き返し」があったのか詳細は定かではないが、「議員の請求を前提とした上限付きクーポンの供与」という改正案は葬られてしまったのだ。
その後、通信費は膨張していく。
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