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総務省接待事件:NTT社長の老獪答弁と東北新社社長が残した「火種」
情報通信行政検証委員会の人選について会見する武田総務相(3月16日)総務省動画チャンネルYouTubeより
<NTT社長と東北新社社長の国会参考人質疑でも総務省接待事件は鎮火しなかった。放送事業者の外資規制違反を巡る新たな問題が浮上。当事者の東北新社社長はこの疑惑にどう答えたのか>
3月16日、武田良太総務相はNTTから接待を受けていた谷脇康彦前総務審議官を停職3カ月の懲戒処分とし、谷脇氏は同日付で辞職した。週刊文春が報じたNTTグループによる接待について、参考人として招致されたNTTの澤田純社長は「おおむね事実である」と国会で認めた。新たな「文春砲」によって、武田総務相がNTT社長と昨年11月11日に会食していた新事実も浮上。NTTグループ内部関係者によるリークが引き起こした炎上は今なお続いており、総務省通信畑(旧郵政省入省組)が誇った「改革の旗手」辞職をもってしても、鎮火となる気配は見えない。
3月15日から16日にかけて参議院と衆議院の予算委員会で行われた参考人質疑で、NTTの澤田社長は「日頃よりマスコミあるいは与野党の国会議員等の有識者と懇談を行っている」とさりげなく述べた。「マスコミ」や「野党」について敢えて言及する必要がない文脈だったが、これを聞いて、電波オークションの導入議論で「既得権益」を批判される放送局など大手メディアや、NTT労組・情報労連出身の議員を抱える野党への「ブーメラン」の可能性を想起した人も多いだろう。一連の接待が総務行政の「歪み」をもたらしたのか、特にNTTドコモの子会社化と関係があるのか――といった疑問をかわす「牽制球」を投げたのだとしたら、相当に老練な答弁術だと言わざるを得ない。
これに対して東北新社の中島信也社長は、「接待の目的は顔つなぎだったということだが、その顔つなぎの目的は何か」と問われ、「顔つなぎの目的は顔つなぎだ」と答弁している。
顔つなぎの目的は顔つなぎ−−。
いったいこれは「一休さんの頓智」か、はたまた「深淵なる禅問答」か。要は贈収賄が疑われるような具体的な請託をしたのではなく、単なる人間関係の維持のために接待をしたと言いたいのだろう。
しかし、顔つなぎが自己目的化して、数珠つなぎのように、監督官庁の特定ポジションの官僚に対する接待が継続されていたとすれば、それがむしろ問題だ。公務員個人との偶発的・個別的な人間関係ではなく、職務権限を有している官僚との関係を常に維持しようとしていたということであれば、職務との関連性は強まる。
「ザル」だった総務省の審査
いずれにせよ、国会での参考人質疑は真相解明には程遠いものだったが、注目されるのは、放送事業者に対する「外資規制」の問題だ。
東北新社は2016年10月、洋画専門BSチャンネル「ザ・シネマ4K」の事業認定を総務省に申請したが、その時点で株主の20.75%(議決権ベース)が外資だった。放送法は、「日本の国籍を有しない人」「外国政府又はその代表者」「外国の法人又は団体」が議決権の五分の一(20%)以上を占めないことを、衛星基幹放送の事業者認定を受ける要件としている。違法性は明確だが、2017年1月に東北新社は事業者認定を受けた。総務省側の審査は「ザル」だった。
しかし、本当の問題はその後だ。中島社長によれば、東北新社は2017年8月4日に外資規制に違反していることに気づいた。そこで、「違反を隠す」ためではなく、「正常化」するために、総務省に報告・相談した上で、子会社に事業を承継したという。その会社こそが、東北新社の100%子会社として2017年9月1日に設立された東北新社メディアサービス社であり、当時官房長官だった菅義偉首相の長男が取締役に名を連ねていた会社である。
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