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総務省接待事件:NTT社長の老獪答弁と東北新社社長が残した「火種」
「資料を持ってきてないので答えられない」
外資規制違反を糊塗するための事業承継だったのか否かは、現時点では不明である。東北新社が報告・相談したという事実ですら、総務省の情報流通行政局総務課長(現電波部長)が予算委員会で「記憶にございません」という答弁を繰り返した。総務省が設置した第三者による「情報通信行政検証委員会」が17日から始動したが、どこまで事案の解明に切り込めるだろうか。
放送法の外資規制は、国民的財産である公共電波の有限性や、放送が言論報道を担う役割の重大性から許容されており、わが国では地上波だけでなく、衛星放送についても導入されている。実際には外資による株式保有数が20%を超えている放送局もあるが、株主名簿への記載(名義書換)拒否という手法によって、議決権ベースで20%を超えないというルールが遵守されている(ちなみに日本戦略研究フォーラム政策提言委員の平井宏治氏の指摘によれば、このルールは2017年9月25日付局長通達によって導入されたという。東北新社案件の処理と同じタイミングだが、関連性は不明である)。
近年では、安全保障の観点からも、放送メディアに対する外国の影響力排除は重大な課題になっている。例えば、イギリス放送通信庁は2021年2月4日、中国の国営メディアである中国中央電視台(CCTV)が所有・運営する多言語テレビ「中国環球電視台」(CGTN)が実質的には中国共産党に支配されているとして、放送免許を取り消している。これに対して中国は2月11日、イギリスBBCの中国国内での放映を禁止する報復措置に出た。ウイグルや香港などでの人権問題を巡って、国益の衝突が放送免許の付与に直結する時代だ。
外資による土地取得も問題視されている。政府は今国会で「重要土地等調査法案」を成立させようとしている。これは、自衛隊基地の周辺や国境の離島など、安全保障上重要な土地を外資が取得することに一定の制約をかけるもので、土地取得者の氏名や国籍、利用状況の実態を調査する権限を政府に付与するものだ。広範に及ぶ私権制限だとして反対する意見も根強く、今国会で成立するか不透明なところがあるが、水源地を中国資本が買い占めるのではないかと懸念する声も高まっている中、いずれ成立することになろう。
放送における外資規制も同じように重要な問題だ。総務省情報流通行政局における気の緩み、事務処理上のミスで済む問題ではない。
15日の参議院予算委員会で「どこの国の企業・個人(が株主)なのか」と問われた東北新社・中島社長は「資料を持ってきてないので、お答えできない」と回答した。事の重大性を理解できていない、上場企業の社長として真相解明にハングリーに貢献する責任感が欠けていると言われても仕方がない。どうしても答えたくない、答えられない事情があったのかもしれないが。
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