コラム

変電所の火災で「機能マヒ」に陥った英ヒースロー空港...最重要インフラの脆弱性、学ぶべき教訓

2025年03月22日(土)16時35分

しかし事件性なしと判断され、オンラインメディアのポリティコは電気技術者のミスが原因ではと報じた。21日夕以降、一部離着陸が再開されたものの、最重要インフラの国際空港の脆弱性が浮き彫りになったことでヒースロー空港や送電会社に批判の目が向けられている。

ヒースロー空港のバックアップシステムは機能しなかったのか。主要国際空港は通常、複数の電力供給源を持っている。英紙フィナンシャル・タイムズによると、ヒースロー空港は3つの変電所に接続しており、火災が発生した変電所はターミナル2、4に電力供給していた。

中規模都市に匹敵する電力供給が必要

重要な滑走路の照明、航空管制、ターミナルに非常用電源を供給するディーゼル発電機は稼働したが、中規模都市に匹敵する電力供給が必要なヒースロー空港全体を稼働させるには十分ではなかった。過去に他の主要国際空港もインフラ事故による機能停止に見舞われている。

英航空会社ブリティッシュ・エアウェイズの元最高経営責任者(CEO)で現在、国際航空運送協会(IATA)のウィリアム・ウォルシュ事務局長は「今回の事故はヒースロー空港が旅行者と航空会社双方を失望させたもう一つの新たな事例に過ぎない」との辛口コメントを発表した。

「重大な疑問が残る。国家および世界的に重要なインフラが単一の電源により深刻な影響を受けるのはなぜなのか。それが事実なら、空港の計画の明らかな失敗だ。混乱に巻き込まれた乗客の対応にかかる費用を誰が負担するのかという問題が生じる」(ウォルシュ氏)

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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