コラム

米国を「孤立主義」から「拡張主義」に転換...「ガザ長期管理」唱えたトランプの狙いは?

2025年02月06日(木)17時44分

ジョー・バイデン前米大統領の対話路線で増長したイランについて「核兵器は持たせない。彼らに1つでも持たせるわけにはいかない。もしイランが核兵器を持つことになれば、彼らにとって非常に不幸なことになる」と明確なレッドライン(越えてはならない一線)を引いた。

中国やサウジアラビアはトランプ氏を批判

トランプ氏は「反ユダヤ主義的」として国連人権理事会から脱退し、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への支援も打ち切った。イランに対して強力な制裁を再び発動。イエメンの反政府武装組織フーシについても再びテロ組織に指定した。

イスラエルと停戦合意したイスラム組織ハマス高官はトランプ氏の発言について「馬鹿げており、不合理だ。このような考えはこの地域に火をつける恐れがある」とロイター通信に語った。中国外務省報道官は「パレスチナ人がパレスチナ人を支配することを信じている」と述べた。

サウジアラビアは声明でパレスチナ人をその土地から追い出す試みを拒否することを強調し、パレスチナ国家が樹立されない限りイスラエルと国交を樹立しないと述べた。他の中東諸国もトランプ氏の発言に強く反発した。

WSJ紙によると、ガザの長期管理はトランプ政権のシニアアドバイザーの間で極秘裏に進められていたという。米民主党は「これは民族浄化だ」とトランプ氏を批判した。世界は帝国主義のような「力による支配」の時代に逆戻りしたのだろうか。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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