コラム

米国を「孤立主義」から「拡張主義」に転換...「ガザ長期管理」唱えたトランプの狙いは?

2025年02月06日(木)17時44分

英紙ガーディアンの記者はホワイトハウスの混乱ぶりを「エイブラハム・リンカーンが安置され、パブロ・カザルスがチェロを演奏した由緒あるイーストルームはライブハウスの最前列と化した。バイデン時代には決して起こらなかったことだ」と伝えた。

英紙フィナンシャル・タイムズの社説(2月5日付)は「あまりに馬鹿げた計画なので日の目を見ることはないだろう。世界最強のリーダーが外交政策を遂行する上での無責任さを浮き彫りにした。米国がガザを管理することはあらゆる国際規範に違反している」と批判した。

トランプ氏は「米国がガザを引き継ぐ。われわれが管理し、敷地内の危険な不発弾やその他の兵器をすべて解体し、破壊された建物を撤去し、平らに整地し、その地域の住民に無制限の数の雇用と住宅を供給する経済開発を行う。中東のリビエラとなる可能性がある」と発言した。

「2国家、1国家、その他の国家は何も意味しない」

ロイター通信によると、イスラエルの空爆で破壊された5000万トン以上の瓦礫の撤去には21年を要し、最大12億ドルの費用がかかる可能性がある。パレスチナ保健省は瓦礫の下に1万体の遺体が埋もれていると推定する。ガザを復興できるのはトランプ氏の言うように米国だけだ。

「ガザを長期管理することは中東の一部、ひょっとしたら中東全体に大きな安定をもたらす。ガザにあるのは死と破壊と瓦礫、倒壊した建物ばかり。恐ろしい場所だ。2国家、1国家、その他の国家は何も意味しない。人々に生活のチャンスを与えたいということだ」(トランプ氏)

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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