コラム

ウクライナ停戦交渉の代償...ゼレンスキー「とっておき」5000億ドル分のレアアースは平和をもたらすか

2025年02月13日(木)19時05分

ベッセント氏との会談ではウクライナの資源ポテンシャルとウクライナ国民のための経済安全保障について話し合われた。米国の支援が止まれば敗北の憂き目にあうゼレンスキー大統領は支援継続を条件に5000億ドル分のレアアース献上をトランプ氏に提案している。

トランプ氏は3日、大統領執務室で記者団に「彼らはレアアースやその他のもので米国の支援を確保しようとしている。私はレアアースによる安全保障を望んでいるし、彼らもそれを望んでいる」と述べた。

1週間後、トランプ氏は米メディアに「5000億ドル分のレアアース」とほんの少しだけ内容を詳らかにした。

資源オファーを先送りにしていたゼレンスキー氏

ウクライナには航空宇宙産業や国防産業で使用される軽量で高強度のチタンや、電気自動車(EV)のバッテリーに使われるリチウムなど重要な鉱物や金属が数多く眠っている。イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジムなどのレアアースも確認されている。

世界が脱炭素化を進める中で、風力タービン発電機に使用される磁石の製造に不可欠なレアアースや、リチウムなど資源の重要性は増している。ゼレンスキー氏はジョー・バイデン前米大統領でなくトランプ氏が返り咲いた場合に備えて資源オファーを先送りにしていたとされる。

ウクライナの英語メディア、キーウ・インディペンデント(4日付)は「トランプ氏がウクライナの重要資源に関心を抱いているのはレアアース市場における中国の優位性が理由かもしれない。中国は世界のレアアース採掘能力の70%、加工能力の90%を支配している」と報じている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀、今週は据え置き 引き続き関税の影響と国内経

ビジネス

米バークシャー、バフェット氏除き取締役は80歳で退

ビジネス

日経平均は続伸、米株の自律反発を好感 半導体株しっ

ビジネス

米食肉工場1000カ所以上の対中輸出登録が失効、5
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自然の中を90分歩くだけで「うつ」が減少...おススメは朝、五感を刺激する「ウォーキング・セラピー」とは?
  • 2
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 5
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    エジプト最古のピラミッド建設に「エレベーター」が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 9
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 10
    奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 8
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 9
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 10
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story