コラム

増加し続けるウクライナ軍の「脱走兵」は20万人に...「限界見えたプーチン」との妥協はあるか

2024年12月12日(木)20時20分

プレスギャングとは政府や軍によって公認され、しばしば本人の意思に反して強制的に個人を軍務に就かせる集団のことだ。英国では17~18世紀にプレスギャングが都市、港、町を歩き回り、英海軍の艦船で働かせる男たちを強制的に連れて行った。

この脱走兵はウクライナ軍の基地に連行され、ほとんど何の軍事訓練も受けずにウクライナ北東部ハルキウ近郊の最前線に送られると告げられた。「ふざけるな」と軍を脱走した。かつて脱走兵はウクライナでは「臆病者」と罵られたが、今年1~10月に約6万人が脱走したという。

脱走法で起訴された兵士は10万人

ウクライナ検察庁によると、22年2月以降、脱走法で起訴された兵士は10万人超。米AP通信は、軍事問題に詳しいウクライナ最高議会議員の話として脱走兵の数は20万人にのぼると報じた。先月、同議会は脱走法を改正、初犯の脱走兵は部隊に戻れば起訴されないようにした。

これにより脱走兵の約2割が部隊に戻ったとデーリー・メール紙は報じている。ロシアの侵攻後、ウクライナは戒厳令を出し、十分な兵員を確保するため18~60歳の男性の出国を禁止した。16万人を追加動員するため今年4月、徴兵年齢が27歳から25歳に引き下げられた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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