コラム

「エゴは外に置いてきて」 クインシー・ジョーンズ、個性派スターをまとめあげた『We Are The World』の奇跡

2024年11月06日(水)17時32分

神様に導かれるようにライオネル・リッチーとマイケル・ジャクソンは2人で曲作りに取り組む。4日間かけ、歌いやすくて印象的で国歌のようなメロディーラインを作り上げた。

個性とアクの強いトップアーティストをオーケストラの指揮者のようにまとめあげられる才能を持っているのはクインシー・ジョーンズを置いて他にいなかった。

「エゴはドアの外に置いてきて」

ブルース・スプリングスティーン、ボブ・ディラン、スティービー・ワンダー、ウィリー・ネルソン、ダイアナ・ロス、ティナ・ターナー、レイ・チャールズ、ビリー・ジョエル、シンディ・ローパー、ヒューイ・ルイス、ポール・サイモン、ディオンヌ・ワーウィック......。

錚々たる顔ぶれがメディアの目を避けて次々と集まってきた。

レコーディングは85年1月28日、ハリウッドのスタジオで秘密裏に行われた。入口には「エゴはドアの外に置いてきて」と書かれた紙が掲げられた。クインシー・ジョーンズはみんなの気持ちを一つにまとめるため、ボブ・ゲルドフにあいさつさせた。

「アフリカで起きていることは歴史的な規模の犯罪だ。生きている人と隣り合わせに横たわっている死体。2万7500人に与えられる小麦粉はわずか15袋というキャンプもある。あなたたちがいま感じていることをこの歌を通して伝えるのが一番だ。上手くいくことを祈ろう」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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