コラム

米英がイエメンの「フーシ派」拠点を攻撃...親イラン武装組織は軍備増強で、ここまで危険な存在になっていた

2024年01月13日(土)11時48分

この際、米海軍の空母ドワイト・D・アイゼンハワーから出撃した戦闘攻撃機F/A-18、ミサイル駆逐艦グレイブリー、ラブーン、メイソン、英海軍のミサイル駆逐艦HMSダイヤモンドによって、18機のカミカゼドローン、2発の対艦巡航ミサイル、1発の対艦弾道ミサイルが撃墜された。

11日にもフーシ派は国際航路に向け対艦弾道ミサイルを発射した。ある民間船舶はミサイルが海面に衝突するのを目視で確認したと報告している。米国を含む14カ国は3日の共同声明で、このまま攻撃を続ければ、その結果をみることになるとフーシ派に警告を発していた。

バイデン氏「航行の自由を脅かすことは許さない」

昨年12月、バイデン政権はイエメン沖の国際海運を守るためフーシ派の攻撃を抑止する20カ国以上の有志連合による「繁栄の守護者」作戦を開始。今回の攻撃はこの枠組みとは別だという。国連安全保障理事会は10日、フーシ派が商船への攻撃をやめるよう求める決議を賛成11カ国で採択した。中国、ロシア、アルジェリア、モザンビークの4カ国は棄権した。

バイデン氏は「これらの標的攻撃は米国とパートナーが自分たちの要員に対する攻撃を容認せず、世界で最も重要な商業航路の一つにおける航行の自由を敵対的行為者が脅かすことを許さないという明確なメッセージだ。必要に応じて、わが国の国民と国際通商の自由な流れを守るためのさらなる措置をとるよう指示を出すことを躊躇しない」と強調した。

リシ・スナク英首相も12日、英空軍が、フーシ派が使用する軍事施設に対し標的を絞った空爆を行ったことを明らかにした。「フーシ派の攻撃は重要な貿易ルートに大きな混乱をもたらし、商品価格を押し上げる。国際社会からの度重なる警告にもかかわらず、フーシ派は攻撃を続けており、英米の軍艦に対する攻撃があったばかり。これは絶対に許されない」

軍事シンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)」のサム・クラニー=エヴァンズ准研究員は「紅海の安全確保:フーシ派の海上攻撃にどう対抗するか」という論考で「商船に対するフーシ派の攻撃は高度な兵器を使用しているにもかかわらず、初歩的なものだ。しかし西側がフーシ派の能力を効果的に低下させるのは難しいかもしれない」と記している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

サムスン、第1四半期のAI半導体低迷を警告 米の対

ワールド

ガザ検問所に米退役軍人配置へ、イスラエル・アラブ諸

ワールド

米レーガン空港、ヘリとのニアミス事案頻発 80年代

ビジネス

コマツ、今吉専務が社長就任へ 小川社長は会長に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story