コラム

米英がイエメンの「フーシ派」拠点を攻撃...親イラン武装組織は軍備増強で、ここまで危険な存在になっていた

2024年01月13日(土)11時48分

船舶の安全確保は不釣り合いな労力を強いる

クラニー=エヴァンズ准研究員は「対艦弾道ミサイルは技術的に重要な海上攻撃能力だ。非国家主体がこの種の兵器を保有し、それを平然と使用しているという事実には重大な懸念を抱かざるを得ない。フーシ派が使用できる最も洗練された兵器は対艦弾道ミサイルのアセフで500キログラムの弾頭を搭載でき、400キロメートルの射程を持つ」と解説する。

エヴァンズ准研究員によると、フーシ派はトラックから発射できる対艦巡航ミサイルのアル・マンデブ2も保有している。2016年以降、フーシ派は対艦巡航ミサイルを使って複数の船舶を攻撃し、損害を与えている。ドローンのサマド2やサマド3も使用できる。サマド3は爆発物を搭載して1500キロメートル以上移動できる。

「船舶の安全確保は攻撃側に比して、防御側に不釣り合いなほど資源集約的な労力を強いる。西側が直面する大きな問題はフーシ派のミサイルやドローンを迎撃すること自体が難しいということではなく、むしろそのためのコストと戦術的・戦略的効果のミスマッチだ。西側はフーシ派の攻撃を防ぐため高価な迎撃ミサイルを消費しなければならない」という。

ウクライナがロシアのドローン・ミサイル攻撃に苦戦しているのも攻撃に比して防御にコストがかかり過ぎるからだ。最も実行可能なアプローチは限定的だがフーシ派にとって貴重な軍事アセットに対する限定的な標的攻撃を行うことだという。攻撃こそ最大の防御なりというわけだ。

しかしイスラエルに不意打ちを食らわせたイスラム組織ハマスといい、フーシ派といいイランの支援を受け、軍事力を格段に向上させている。イスラエル・ハマス戦争をできる限り早く収束させないと火種は中東全域に広がり、鎮火するのはさらに困難になる。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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