コラム

不名誉な「化石賞」の常連となった日本...深刻すぎる化石燃料「依存症」の理由は、いったい何なのか?

2023年12月05日(火)19時44分
COP28「今日の化石賞」

「今日の化石賞」の2位に選ばれた日本(筆者撮影)

<気候変動対策の交渉を妨げる国に贈られる、不名誉な「今日の化石賞」で2位になった日本。環境への取り組みはどう見られているのか>

[ドバイ発]アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでの国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で3日、交渉の進展を妨げる国に授与される不名誉な「今日の化石賞」が発表された。1位は海底石油・天然ガス開発を再開するニュージーランド、2位は化石燃料に公的資金を提供する日本、3位は「損失と損害」基金にあまり資金を出さなかった米国だ。

「 今日の化石賞」は1999年に始まり、COP期間中、世界的な環境団体ネットワーク、気候行動ネットワーク(CAN)のメンバーが投票して決めている。ニュージーランドは先住民の声に耳を傾け、2018年に海底石油・ガス開発を禁止したものの、新政権はこの方針を撤回する方針で、環境団体から厳しい目が向けられている。

いまや「化石賞」の常連となった日本について、CANは「岸田文雄首相は『世界の脱炭素化に貢献する』と主張する2つのイニシアチブでグリーンよりもグリーンであるかのように見せたいようだが、国内およびアジア全域で石炭とガスの寿命を延ばそうとしているのが透けて見える」と苦言を呈する。

「これは水素やアンモニアを化石燃料と混焼し、火力発電所をずっと先まで稼働させるグリーンウォッシュ以外の何ものでもない。アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)イニシアチブを通じ、混焼技術を使って石炭・ガス火力発電所を稼働させ続けるよう東南アジアに売り込みをかけ、自然エネルギーを3倍にする世界的な目標達成を妨げている」と指摘する。

「さよなら化石燃料」は可能なのか

COP28の「化石賞」

ピカチュウと一緒に「さよなら化石燃料」を連呼する世界の市民団体メンバー(同)

「ファイナンスデー」の4日、世界各国の市民団体は岸田首相に対して新たな化石燃料プロジェクトへの資金提供を停止し、再生可能エネルギーへの支援に移行するよう求めるアクションを起こした。COP28会場の一角でピカチュウも加わり、「さよなら化石燃料」のシュプレヒコールを連呼した。

バングラデシュの市民団体「ウォーターキーパーズ・バングラデシュ」コーディネーター、シャリフ・ジャミル氏は筆者に「日本は1971年の独立以来、バングラデシュ最大の開発パートナーだ。日本はバングラデシュで石炭火力発電所の建設に投資している。バングラデシュ政府に化石燃料を優先したエネルギー政策を策定するよう提案している」と語る。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story