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世界にアピールする岸田首相のグリーン・トランスフォーメーション(GX)、なぜ評価が低いのか?
地球環境市民会議(CASA)の早川光俊専務理事は「岸田首相のスピーチはまったく評価できない。地球沸騰化や、瀕死の状態といわれる1.5度目標への危機感がない。石炭火力についても石炭火力自体の廃止には言及しなかった。30年までの対策が決定的に重要だとの認識に欠けていると言わざるをえない」と厳しい。
FoE Japanの髙橋英恵氏は「『排出削減対策が講じられていない新規の国内の石炭火力の建設をやめる』との宣言は非常に周回遅れの発言と言わざるを得ない。日本は国内にあるすべての石炭火力発電所を段階的に早急に廃止するための明確なスケジュールを策定するべきだ。原子力にも頼るべきではない」と強調する。
人生の大半を環境問題に費やすチャールズ国王
日本国憲法前文で「国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う」と宣言した高い志はいったいどこに行ったのか。一方、昨年はエジプトのシャルム・エル・シェイクで開かれたCOP27は成長至上主義者のリズ・トラス英首相(当時)から出席しないよう釘を刺されたチャールズ国王だが、今年はCOP28への出席が叶った。
長年にわたる環境問題の活動家として知られるチャールズ国王は自国のスコットランドで開催されたCOP26の開会式で「世界の意思決定者が貴重な地球を救い、危機に瀕した若者の未来を救うために力を合わせられるよう、違いを克服する現実的な方法を見出すことを強く求める」と呼びかけ、喝采を浴びた。
COP28でチャールズ国王は「私は地球温暖化、気候変動、生物多様性の損失など人類が直面する存亡の危機を警告することに人生の大半を費やしてきた。UAEが誕生して数十年の間に大気中の二酸化炭素は30%増え、メタンガスは40%近く増加している。グローバルストックテイク報告書が示すように私たちは軌道から大きく外れている」という。
「私は英連邦内外で気候変動によって生活と生計が破綻し、度重なる衝撃に耐えられなくなった無数の地域社会を見てきた。バヌアツやドミニカのような脆弱な島国ではサイクロンが繰り返し襲い、最も脆弱な被害者の犠牲が増大している。インド、バングラデシュ、パキスタンは未曾有の洪水に見舞われ、東アフリカは数十年にわたる干ばつに苦しんでいる」
英国の温暖化対策を遅らせるEU強硬離脱派リバタリアン
トラス前首相の背後には英与党・保守党内の欧州連合(EU)強硬離脱派リバタリアンが蠢いている。気候変動では「負の外部性(経済活動が第三者に有害な影響を与えること)」が発生するため、規制という政府の介入が不可欠になる。リバタリアンはこれが我慢ならない。彼らが主張する市場原理主義を貫けば英国の温暖化対策は大幅に後退しかねない。