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イスラエル・ハマス戦争を巡る「西側社会のジレンマ」が物語る、歴史の転換点
イスラエル・ハマス戦争の即時停戦を求める親パレスチナ派の抗議デモ(11月11日、筆者撮影)
<反移民・反難民の過激な発言で知られる英ブラバーマン内相が解任され、キャメロン元首相が外相に任命されたサプライズ人事の意味とは>
[ロンドン発]イスラエル・ハマス戦争や移民・難民、ホームレスを巡る問題で過激な発言を繰り返してきた英国のスエラ・ブラバーマン内相が11月13日、リシ・スナク首相によって解任された。この人事に伴い、欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票でカオスの入り口を開いたデービッド・キャメロン元首相が外相に任命され、驚きを広げた。
党内に欧州懐疑派を抱える与党・保守党の混乱が始まったのは2015年総選挙でキャメロン氏(当時首相)が思わぬ過半数(定数650)の330議席を獲得したのが発端だ。10年に連立を組んだ自由民主党との計363議席に比べると、党内の造反で主要法案が通らなくなる恐れが膨らみ、キャメロン氏はEU国民投票の実施に追い込まれる。
それ以来、保守党だけでなく、英国政治はブラバーマン氏が議長を務めたことがある欧州懐疑派の「欧州研究グループ」に鼻面を引き回されてきた。ドイツの新興極右政党「ドイツのための選択肢」が欧州単一通貨ユーロへの疑念から反移民・反難民の極右路線に舵を切ったように、英国保守党も議会主権の復権から反移民・反難民へと同じ道を進んできた。
EU離脱で保守党から中道右派のEU残留派はほぼ一掃された。EU残留派で「英中黄金時代」の立役者キャメロン氏の外相就任はスナク首相の下で進むEU離脱の見直しのほか、ドナルド・トランプ前米大統領に引きずられて始まった対中対決路線の修正という複雑なメッセージを内包する。英国はイスラエル・ハマス戦争の停戦に動く布石のようにも感じる。
英国の衰退という自己認識を欠く政治家たち
キャメロン氏の外相就任というサプライズ人事でブラバーマン氏解任というバッド・ニュースの目先を変えることにスナク首相が成功したのは間違いない。「欧州研究グループ」は英国の衰退という自己認識を欠く尊大な政治家の集まりで、07年から英国政治をウオッチしている筆者には故水木しげる氏の漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくる西洋妖怪軍団そのものだった。
その中でもブラバーマン氏の恐ろしさは突出している。語録を振り返っておこう。「労働党、自由民主党、カオス連合、(左派系の英紙)ガーディアンを読み、豆腐を食べる覚醒した人々、あえて言えば反成長連合が道路交通網を混乱させた」(市民生活に深刻な影響を与えた環境保護主義者の過激な抗議運動について)
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