コラム

イスラエル・ハマス戦争を巡る「西側社会のジレンマ」が物語る、歴史の転換点

2023年11月14日(火)19時15分

「英国の街頭がライフスタイルの選択として路上で生活する人々(その多くは外国から来た人々)に占拠されたテントの列によって占拠されることは許されない。今すぐ介入しない限り、英国の都市はサンフランシスコやロサンゼルスのような米国の都市と同じ道をたどる。英国では誰も路上でテント生活をしてはならない」(ホームレスについて)

「労働党が(不法移民の権利を守る)英国の人権法を "犯罪者権利法 "と呼ばなかったことに驚く。世界を再構築する重要な要因の一つは前例のない大移動だ。20世紀に私の両親を世界に運んだ変化の風はこれからやってくるハリケーンに比べればほんの突風にすぎない。さらに何百万人もの移民が英国の海岸にやって来る可能性がある」(移民・難民について)

「彼女は単に国民の多くが思っていることを言っただけ」

ロンドン生まれのブラバーマン氏は1960年代にモーリシャスとケニアから英国に渡ったインド系移民の娘である。インドから大英帝国の植民地へ、そして英国へと二度にわたる移住を経験した「二度移民」の家系には英国人以上に英国人らしく振る舞う人がいる。英紙タイムズは「彼女は単に国民の多くが思っていることを言っただけ」との擁護論を紹介している。

同紙によると、ブラバーマン氏はソルボンヌ大学で修士号を取得し、パリの左岸に住み、ジャズを聴き、詩を読み、文化的な目覚めを経験したという。地元選挙区の保守党地方議員は「彼女は本当に温かく、愛情深い女性だ。多くの住民は彼女の描かれ方に腹を立てている」と証言している。

ブラバーマン氏はEU離脱派の中でも「スパルタン」と呼ばれる強硬派。夫はユダヤ人で、ユダヤ人の多い地域に住んでいたことからユダヤ人コミュニティーと強いつながりを持つ。親パレスチナ派が即時停戦を求める抗議デモで「川から海へ」を唱和したため、ブラバーマン氏は「イスラエルの破壊を求める反ユダヤ主義。デモは嫌悪だ」と過激に反応した。

「川から海まで」とはヨルダン川から地中海までを指し、イスラエルも含まれるため、親イスラエル派は「イスラエルの破壊を呼びかける反ユダヤ主義」と猛反発している。第一次大戦休戦記念日の11月11日、戦没者を追悼するため官庁街のセノタフ(慰霊碑)に集まったのは数百人だったのに対して親パレスチナ派の停戦デモは30万人という広がりを見せた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中央軍、オマーン湾とアラビア海での封鎖を通知 イ

ワールド

イスラエル国民はイラン停戦に反対、尊重するかで世論

ワールド

英仏、ホルムズ海峡巡り今週会合開催 防衛的海上任務

ビジネス

基本原則は債務残高のGDP比引き下げ、債務の定義で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目の…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story